GF e-side
純情エゴイストへの愛を散らかし中。
2008'10.07.Tue
『Happy Lovers』(津森視点話)の、野分視点バージョンです。『Happy Lovers』を読んでいなくても大丈夫です。
* * *
ヒロさんに会いたい…。
今日で連続勤務何日目だっけ。流石に疲れもピークに達している。病院の休憩室で一息ついて、最初に頭に浮かんだ言葉は、“疲れた”ではなく、『ヒロさんに会いたい』だった。
もう何日も顔を見てない、大好きな人。これ以上会えなかったら、ヒロさん不足で死んでしまうかもしれない、なんて半ば本気で考える。
きっと、俺にとってヒロさんに会いたいと思う事は、“眠い”とか“お腹空いた”と思うのと同じ位自然な事なんだと思う。だから、眠ったり食事をしたりしなければ死んでしまうのと同じように、ヒロさんに会わないと死んでしまうんだ。
そんな事を馬鹿みたいに真剣に考えていると、津森先輩が部屋に入って来た。
挨拶を交わした後、からかうような調子で言われる。
「お前が帰らないから、カワイイ恋人も淋しがってるんじゃないのか~?」
「淋し…がってるでしょうか…」
いつもの先輩の軽口にも上手く反応できない。俺がヒロさんに会いたいと思っているのと同じようにヒロさんも思ってくれていると言い切る程の自信がない。疲れがたまるとロクな事を考えないな、と口をつぐんでいると、先輩に昼食をとったのか問われる。
まだ食べていないけど、食欲がわかない。食べなければ体がもたないのは分かっているから、後で何か軽く食べるつもりではあるけど、今は食べたくないので先輩には申し訳ないと思いつつ、昼食の誘いは断ってしまった。
先輩が部屋を出てすぐに、俺の携帯がメールの着信を告げる。もしや…と期待を抱いて差出人の名前を見ると、ヒロさんからの『少し時間とれないか?』という簡素なメール。
一番会いたい人からのメールにすごく嬉しくなりながらも、普段、平日の昼間という時間には滅多に連絡して来ないヒロさんからメールが来るなんて何かあったのだろうかと不安になる。
休憩中だからすぐに行ける旨を返信すると、ヒロさんはもう病院の近くに来ているらしく、『ロビーで待ってる』と簡素な返事が返って来た。
すぐに休憩室を飛び出して、エントランスに向かう。メールの文面に特におかしなところはなかったから、多分本当に何か用事があって俺に会いに来てくれたんだろう。それがどんな些細な用事だとしても、ヒロさんが来てくれるだけで嬉しい。
急いでロビーに行き、さっと辺りを見回したけれどヒロさんらしき姿は見えない。代わりに、さっき昼食に行くと言って出て行った先輩を見つけたのでヒロさんを見なかったかと聞いてみると、返ってきた答は“さっきまでここにいた”という事。
もう一度確かめるように辺りを見ても、やはりヒロさんはいない。でも先輩はヒロさんを見たと言っているという事は…。
「先輩。ヒロさんをどこにやったんですか?」
自然と声音が低くなる。職場の先輩に対して取る態度ではないのは分かっているけれど、ヒロさんに関する事となると自制が効かなくなってしまう。それに、以前、ヒロさんをからかった事のある先輩だからこそ、今回もこの表情からすると、何か知っているに違いない。
問い詰めると、先輩はあっさりと、ヒロさんには休憩室への近道を教えたと白状してくれた。別に嫌がらせをするつもりではなく、単にまたからかっているのは分かっているのだけど、わざわざ俺が使わない道を教えるなんて、先輩も人が悪い。
「こんな所で俺と話してないで追い掛けた方がいいんじゃないか?」
先輩が指し示した先には、中庭を突き進むヒロさんの背中。
ヒロさんをからかうのもいい加減にして下さい、と怒りたいけど、ヒロさんを追うのが先決だ。
普段使わない近道を、ヒロさん目指して走る。
気付いて欲しくて大声で名前を呼ぶと、驚いたように振り返って足を止めてくれた。
俺が追いつくと不思議そうな顔をしている。
「野分?あれ…?どうして…」
「俺、この近道は使わないんです。というか、使う人は殆どいません」
「え…。だってお前の先輩が…」
来た方向を見てみると、満面の笑みの津森先輩が手を振っている。
やっぱり遊ばれてたみたいだ。
「アイツ…っ!何度俺をからかったら気が済むんだ!!!」
またしてもいいようにからかわれた事に気付いたヒロさんは顔を真っ赤にして怒鳴る。
「でもヒロさん、今回はヒロさんもいけないです」
「なんでだよ!?」
「ちゃんと待ち合わせた場所にいて下さい」
ヒロさんはきっと、途中で俺に会えると思って先輩に言われるままに近道を進んでくれたんだと思う。それは嬉しい。でも、約束した場所にいなかった時に、俺がどれだけ心配するか分かって欲しい。
「あー…それは…悪かった」
まんまと先輩の策略に引っかかってしまった気恥ずかしさもあるのだろう。少し頬を染め、あさっての方向を向きながら謝るのがヒロさんらしくて可愛い。
「ところでヒロさん。何か俺に用があったんじゃないんですか?」
「ああ、そうだ。コレ」
ヒロさんが手に持っていた袋を差し出す。受け取ると、中からはほのかにフルーツの香りがする。
「実家から大量に果物を送って来たんだけどさ、お前帰って来るのいつになるかわかんねーし、俺一人じゃ食べきる前にダメにしちまうから持ってきた。病院の奴らと分けて食え」
「ヒロさん…わざわざ持って来てくれたんですね…」
「つ、ついでだ、ついで!こっちに来る用があったからな!」
まるで言い訳するかのように、早口でまくしたてるのは照れている証拠。別に俺は何も言っていないのに、“野分に会いに来たなどと思われるのは心外だ”なんて思っているのかもしれない。
「ありがとうございます。何も食べてなくてお腹空いてたんです」
………あれ?
自分の口から出た言葉にふと違和感を感じる。
そういえば、さっき先輩に『食欲がない』と言わなかっただろうか。あの時は確かに何かを食べようという気分ではなかった。でも、不思議と今はすごくお腹が空いている。
「一つ頂いていいですか?」
「いいけど冷えてねぇぞ」
「いいんです。ヒロさんがいてくれる間に食べたいです」
「なんだそれは…」
ヒロさんに会えただけで、食欲増進、疲労回復。俺は本当にお手軽だな、と思う。
それとも、ヒロさんがすごいのか。
「あっちにベンチがありますから、そこで食べます。ヒロさん、時間あるんでしたらそれ食べた後、一緒にお昼食べませんか?」
「デザート食ってから飯かよ!?フツー逆だろ」
「いいんです。ヒロさんが持ってきてくれた物を先に食べたいですから」
「まあいいけど」
もしかしたら、ヒロさんも俺に会いたくなって、差し入れを口実にして来てくれたのでは、と思うのは自惚れだろうか。
「…何笑ってんだよ」
「いえ。ヒロさんと一緒にいられるのが嬉しいな、って」
いつものように素直に気持ちを口にしたら、ヒロさんもいつものように真っ赤になる。
「昼飯食うだけだろうが!」
「それでもやっぱり嬉しいです」
短い時間でも、ヒロさんと一緒の時間を過ごせるのが嬉しい。これでなんとか今日一日はヒロさん不足で死ななくてすみそうだ。
残りのヒロさん補給は家に帰ってからお願いしてみよう、と考えながら、先に歩き始めたヒロさんの背中を追った。
Fin.
--
つもりん話でつもりんには聞こえなかった二人の会話はこんな感じでした。
野分の三大欲求は、食欲・睡眠欲・ヒロさん、だと思います。一般的な三大欲求と入れ替わってるように見せかけてちっとも入れ替わってないです。
ヒロさんに会いたい…。
今日で連続勤務何日目だっけ。流石に疲れもピークに達している。病院の休憩室で一息ついて、最初に頭に浮かんだ言葉は、“疲れた”ではなく、『ヒロさんに会いたい』だった。
もう何日も顔を見てない、大好きな人。これ以上会えなかったら、ヒロさん不足で死んでしまうかもしれない、なんて半ば本気で考える。
きっと、俺にとってヒロさんに会いたいと思う事は、“眠い”とか“お腹空いた”と思うのと同じ位自然な事なんだと思う。だから、眠ったり食事をしたりしなければ死んでしまうのと同じように、ヒロさんに会わないと死んでしまうんだ。
そんな事を馬鹿みたいに真剣に考えていると、津森先輩が部屋に入って来た。
挨拶を交わした後、からかうような調子で言われる。
「お前が帰らないから、カワイイ恋人も淋しがってるんじゃないのか~?」
「淋し…がってるでしょうか…」
いつもの先輩の軽口にも上手く反応できない。俺がヒロさんに会いたいと思っているのと同じようにヒロさんも思ってくれていると言い切る程の自信がない。疲れがたまるとロクな事を考えないな、と口をつぐんでいると、先輩に昼食をとったのか問われる。
まだ食べていないけど、食欲がわかない。食べなければ体がもたないのは分かっているから、後で何か軽く食べるつもりではあるけど、今は食べたくないので先輩には申し訳ないと思いつつ、昼食の誘いは断ってしまった。
先輩が部屋を出てすぐに、俺の携帯がメールの着信を告げる。もしや…と期待を抱いて差出人の名前を見ると、ヒロさんからの『少し時間とれないか?』という簡素なメール。
一番会いたい人からのメールにすごく嬉しくなりながらも、普段、平日の昼間という時間には滅多に連絡して来ないヒロさんからメールが来るなんて何かあったのだろうかと不安になる。
休憩中だからすぐに行ける旨を返信すると、ヒロさんはもう病院の近くに来ているらしく、『ロビーで待ってる』と簡素な返事が返って来た。
すぐに休憩室を飛び出して、エントランスに向かう。メールの文面に特におかしなところはなかったから、多分本当に何か用事があって俺に会いに来てくれたんだろう。それがどんな些細な用事だとしても、ヒロさんが来てくれるだけで嬉しい。
急いでロビーに行き、さっと辺りを見回したけれどヒロさんらしき姿は見えない。代わりに、さっき昼食に行くと言って出て行った先輩を見つけたのでヒロさんを見なかったかと聞いてみると、返ってきた答は“さっきまでここにいた”という事。
もう一度確かめるように辺りを見ても、やはりヒロさんはいない。でも先輩はヒロさんを見たと言っているという事は…。
「先輩。ヒロさんをどこにやったんですか?」
自然と声音が低くなる。職場の先輩に対して取る態度ではないのは分かっているけれど、ヒロさんに関する事となると自制が効かなくなってしまう。それに、以前、ヒロさんをからかった事のある先輩だからこそ、今回もこの表情からすると、何か知っているに違いない。
問い詰めると、先輩はあっさりと、ヒロさんには休憩室への近道を教えたと白状してくれた。別に嫌がらせをするつもりではなく、単にまたからかっているのは分かっているのだけど、わざわざ俺が使わない道を教えるなんて、先輩も人が悪い。
「こんな所で俺と話してないで追い掛けた方がいいんじゃないか?」
先輩が指し示した先には、中庭を突き進むヒロさんの背中。
ヒロさんをからかうのもいい加減にして下さい、と怒りたいけど、ヒロさんを追うのが先決だ。
普段使わない近道を、ヒロさん目指して走る。
気付いて欲しくて大声で名前を呼ぶと、驚いたように振り返って足を止めてくれた。
俺が追いつくと不思議そうな顔をしている。
「野分?あれ…?どうして…」
「俺、この近道は使わないんです。というか、使う人は殆どいません」
「え…。だってお前の先輩が…」
来た方向を見てみると、満面の笑みの津森先輩が手を振っている。
やっぱり遊ばれてたみたいだ。
「アイツ…っ!何度俺をからかったら気が済むんだ!!!」
またしてもいいようにからかわれた事に気付いたヒロさんは顔を真っ赤にして怒鳴る。
「でもヒロさん、今回はヒロさんもいけないです」
「なんでだよ!?」
「ちゃんと待ち合わせた場所にいて下さい」
ヒロさんはきっと、途中で俺に会えると思って先輩に言われるままに近道を進んでくれたんだと思う。それは嬉しい。でも、約束した場所にいなかった時に、俺がどれだけ心配するか分かって欲しい。
「あー…それは…悪かった」
まんまと先輩の策略に引っかかってしまった気恥ずかしさもあるのだろう。少し頬を染め、あさっての方向を向きながら謝るのがヒロさんらしくて可愛い。
「ところでヒロさん。何か俺に用があったんじゃないんですか?」
「ああ、そうだ。コレ」
ヒロさんが手に持っていた袋を差し出す。受け取ると、中からはほのかにフルーツの香りがする。
「実家から大量に果物を送って来たんだけどさ、お前帰って来るのいつになるかわかんねーし、俺一人じゃ食べきる前にダメにしちまうから持ってきた。病院の奴らと分けて食え」
「ヒロさん…わざわざ持って来てくれたんですね…」
「つ、ついでだ、ついで!こっちに来る用があったからな!」
まるで言い訳するかのように、早口でまくしたてるのは照れている証拠。別に俺は何も言っていないのに、“野分に会いに来たなどと思われるのは心外だ”なんて思っているのかもしれない。
「ありがとうございます。何も食べてなくてお腹空いてたんです」
………あれ?
自分の口から出た言葉にふと違和感を感じる。
そういえば、さっき先輩に『食欲がない』と言わなかっただろうか。あの時は確かに何かを食べようという気分ではなかった。でも、不思議と今はすごくお腹が空いている。
「一つ頂いていいですか?」
「いいけど冷えてねぇぞ」
「いいんです。ヒロさんがいてくれる間に食べたいです」
「なんだそれは…」
ヒロさんに会えただけで、食欲増進、疲労回復。俺は本当にお手軽だな、と思う。
それとも、ヒロさんがすごいのか。
「あっちにベンチがありますから、そこで食べます。ヒロさん、時間あるんでしたらそれ食べた後、一緒にお昼食べませんか?」
「デザート食ってから飯かよ!?フツー逆だろ」
「いいんです。ヒロさんが持ってきてくれた物を先に食べたいですから」
「まあいいけど」
もしかしたら、ヒロさんも俺に会いたくなって、差し入れを口実にして来てくれたのでは、と思うのは自惚れだろうか。
「…何笑ってんだよ」
「いえ。ヒロさんと一緒にいられるのが嬉しいな、って」
いつものように素直に気持ちを口にしたら、ヒロさんもいつものように真っ赤になる。
「昼飯食うだけだろうが!」
「それでもやっぱり嬉しいです」
短い時間でも、ヒロさんと一緒の時間を過ごせるのが嬉しい。これでなんとか今日一日はヒロさん不足で死ななくてすみそうだ。
残りのヒロさん補給は家に帰ってからお願いしてみよう、と考えながら、先に歩き始めたヒロさんの背中を追った。
Fin.
--
つもりん話でつもりんには聞こえなかった二人の会話はこんな感じでした。
野分の三大欲求は、食欲・睡眠欲・ヒロさん、だと思います。一般的な三大欲求と入れ替わってるように見せかけてちっとも入れ替わってないです。
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