GF e-side
純情エゴイストへの愛を散らかし中。
2008'09.23.Tue
3万打時のリクエスト募集で、つもりん話をリクエスト頂きましたので、つもりん視点のエゴ話です。リクエストありがとうございましたv
* * *
休憩室に顔を出すと、ぐったりした様子の野分がいた。
こいつは連勤何日目だっけ。一週間以上な事は確かだ。研修医が必ず通る道とはいえ、普段あまり疲れを見せない野分から生気を感じられないのは余程の事だ。
「あ、先輩…。お疲れ様です」
俺の気配に気付いた野分は、居住まいを正して挨拶して来る。おーおー、律儀なコトで。
「おつかれ。連勤続くなー」
「ええ…。多分明日には帰れると思うんですが…」
「お前が帰らないから、カワイイ恋人も淋しがってるんじゃないのか~?」
疲れ果てた哀れな後輩には、“とにかく可愛い”恋人の話題が一番効く。大体うんざりする程のノロケ話になるのだが、野分が普段見せない程幸せそうな顔で話すのを見るのが面白くて、つい話に乗ってしまう。
「淋し…がってるでしょうか…」
「ん?」
しかし今日は勝手が違う。
流石の野分もここまで疲れきっていると、あの人の話題に乗る元気もないようだ。
「ま、家に帰れたら充分癒やしてもらうんだな。ところでお前、昼飯は?」
「あんまり食欲ないんで…。後で少し食べる事にします」
「あ、そ。じゃあ俺は食べて来るかな」
野分を残し、休憩室を後にする。病院の外で食べるか病院内で食べるか考えながらエントランスを通りかかると、ナイスタイミングというべきか、珍しい顔を見つけた。
「あれー?上條さん、お久しぶりですねー」
俺の顔を見て、明らかにギョッとしたような顔するのが予想通りの反応で面白い。それでもなんとか取り繕い、軽く会釈される。
「野分っスか?今丁度休憩入ったトコですから、会えると思いますよ」
「えっ…。いや、別に会いに来た訳じゃ…」
じゃあ一体何をしに来たと言うつもりだろう、この人は。
野分の名前を出しただけでここまで動揺するとは、本当にからかいがいのある人だ。
「これ!これを差し入れしようと思って来ただけなんで、もしあれだったら野分に渡すなり、病棟の人達で食べてもらえれば…」
上條さんが差し出した紙袋の中には果物が入っているらしい。ここで俺が預かる事は勿論できるが、後で野分に『これ、さっき上條さんから預かった』などと言って渡したら、何を言われるか分からない。まあ、それも面白いんだが。
「ああ、俺、これから外に出るとこなんですよ。スイマセン」
だから預かれない、と言うと明らかにほっとしたような顔をする。こんなに分かりやすすぎる反応をされると、ますますからかいたくなる。
「野分なら休憩室にいますから、直接持って行っちゃって構いませんよ」
「いや、でも…」
「この道通ると休憩室までの近道ですから。すぐ分かると思うんで」
躊躇する上條さんに、中庭の道を指し示す。部外者はあまり使わない道だが、建物内を通るより確実に早く休憩室に着く道だ。
上條さんは少し考えた後、俺の勧めに従うという結論を出し、「どうも」と一言残して中庭を進んで行った。
「先輩!」
上條さんの背中を見送っていると、逆方向から声を掛けられる。
「ヒロさん見ませんでしたか!?ロビーで待ってるってメール来てたんですけど…」
さっきまで疲労困憊していた人物とは別人のように弾んだ声。上條さんは俺に会う前に野分に連絡していたらしい。だから休憩室に行くのを躊躇っていたのか。最終的に俺に従ったのは、野分もこちらに向かっているのだから、途中で野分に会えると踏んだのだろう。
「ああ、上條さんならさっきまでここにいたぞ」
わざとニヤリと笑ってみる。野分はさっと辺りを見やり、上條さんがいないのを確認すると、剣呑に目を細めた。
「先輩。ヒロさんをどこにやったんですか?」
いつも笑顔の“草間せんせー”がこんな顔をしているのを子供達が見たら泣き出してしまうかもしれない。『どこにやった』って俺は誘拐監禁犯か何かかよ。
先輩としてそれなりに慕われているようだし、信頼もされているはずなのに、上條さんが関わるだけで、野分の俺への信頼度は下落する。大体、お前が手に持ってる文明の利器は何のためにあるんだっつーの。上條さんに電話なりメールなりして居場所を聞けばいいだけなのに、上條さんがいるはずの場所にいなかったせいで、野分はそんな事も失念する程取り乱してしまったらしい。
かつて、野分の事で必死な上條さんをからかったりしたが、野分も十分必死過ぎて面白い。あの野分がここまで豹変するのを目の前で見て、ある種の感動すら覚えてしまう。
「先輩!」
「ハイハイ。大声出すな。上條さんには休憩室への近道教えてあげただけだって」
「近道って…。俺が普段中庭通らないの知ってるじゃないですか!」
「お前が来るなんて知らなかったんだから仕方ないだろ」
中庭の近道は、近い事は近いのだが、木が覆い茂っている部分もあったりして、使う人は限られている。
「こんな所で俺と話してないで追い掛けた方がいいんじゃないか?」
俺の言葉にハッとして、野分は中庭に飛び出す。見ると、遠くに上條さんの姿が見える。上條さん目掛けて走って行く野分はまるで、ご主人様を見つけて大喜びな犬っころのようで、思わず笑ってしまう。
野分に追いつかれた上條さんは何やら野分に怒鳴っているが、野分は幸せそうだからあれでいいんだろう。ふとこちらを見た上條さんと目が合ったので、お母さん方に人気の最上級の笑顔を浮かべて手を振ってみたが無視されてしまった。そして、更に野分に怒鳴り散らしている。からかわれた事に気付いたんだろう。
あんなに聡い人なのに、野分の事となると自分をなくしてしまう不器用さ。野分はそれだけ想われているという事に気付いているのだろうか。
端から見ればお互いベタ惚れなのは丸わかりなのに、どうにもあの二人は危なっかしい部分があって、見ていて飽きない。
また遊びに来て下さいね、上條さん。いつでも大歓迎です。
Fin.
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つもりん楽しかったです!もう少し軽い感じにしたかった気もするのですが…。本当に、エゴの二人はからかい甲斐あります。
休憩室に顔を出すと、ぐったりした様子の野分がいた。
こいつは連勤何日目だっけ。一週間以上な事は確かだ。研修医が必ず通る道とはいえ、普段あまり疲れを見せない野分から生気を感じられないのは余程の事だ。
「あ、先輩…。お疲れ様です」
俺の気配に気付いた野分は、居住まいを正して挨拶して来る。おーおー、律儀なコトで。
「おつかれ。連勤続くなー」
「ええ…。多分明日には帰れると思うんですが…」
「お前が帰らないから、カワイイ恋人も淋しがってるんじゃないのか~?」
疲れ果てた哀れな後輩には、“とにかく可愛い”恋人の話題が一番効く。大体うんざりする程のノロケ話になるのだが、野分が普段見せない程幸せそうな顔で話すのを見るのが面白くて、つい話に乗ってしまう。
「淋し…がってるでしょうか…」
「ん?」
しかし今日は勝手が違う。
流石の野分もここまで疲れきっていると、あの人の話題に乗る元気もないようだ。
「ま、家に帰れたら充分癒やしてもらうんだな。ところでお前、昼飯は?」
「あんまり食欲ないんで…。後で少し食べる事にします」
「あ、そ。じゃあ俺は食べて来るかな」
野分を残し、休憩室を後にする。病院の外で食べるか病院内で食べるか考えながらエントランスを通りかかると、ナイスタイミングというべきか、珍しい顔を見つけた。
「あれー?上條さん、お久しぶりですねー」
俺の顔を見て、明らかにギョッとしたような顔するのが予想通りの反応で面白い。それでもなんとか取り繕い、軽く会釈される。
「野分っスか?今丁度休憩入ったトコですから、会えると思いますよ」
「えっ…。いや、別に会いに来た訳じゃ…」
じゃあ一体何をしに来たと言うつもりだろう、この人は。
野分の名前を出しただけでここまで動揺するとは、本当にからかいがいのある人だ。
「これ!これを差し入れしようと思って来ただけなんで、もしあれだったら野分に渡すなり、病棟の人達で食べてもらえれば…」
上條さんが差し出した紙袋の中には果物が入っているらしい。ここで俺が預かる事は勿論できるが、後で野分に『これ、さっき上條さんから預かった』などと言って渡したら、何を言われるか分からない。まあ、それも面白いんだが。
「ああ、俺、これから外に出るとこなんですよ。スイマセン」
だから預かれない、と言うと明らかにほっとしたような顔をする。こんなに分かりやすすぎる反応をされると、ますますからかいたくなる。
「野分なら休憩室にいますから、直接持って行っちゃって構いませんよ」
「いや、でも…」
「この道通ると休憩室までの近道ですから。すぐ分かると思うんで」
躊躇する上條さんに、中庭の道を指し示す。部外者はあまり使わない道だが、建物内を通るより確実に早く休憩室に着く道だ。
上條さんは少し考えた後、俺の勧めに従うという結論を出し、「どうも」と一言残して中庭を進んで行った。
「先輩!」
上條さんの背中を見送っていると、逆方向から声を掛けられる。
「ヒロさん見ませんでしたか!?ロビーで待ってるってメール来てたんですけど…」
さっきまで疲労困憊していた人物とは別人のように弾んだ声。上條さんは俺に会う前に野分に連絡していたらしい。だから休憩室に行くのを躊躇っていたのか。最終的に俺に従ったのは、野分もこちらに向かっているのだから、途中で野分に会えると踏んだのだろう。
「ああ、上條さんならさっきまでここにいたぞ」
わざとニヤリと笑ってみる。野分はさっと辺りを見やり、上條さんがいないのを確認すると、剣呑に目を細めた。
「先輩。ヒロさんをどこにやったんですか?」
いつも笑顔の“草間せんせー”がこんな顔をしているのを子供達が見たら泣き出してしまうかもしれない。『どこにやった』って俺は誘拐監禁犯か何かかよ。
先輩としてそれなりに慕われているようだし、信頼もされているはずなのに、上條さんが関わるだけで、野分の俺への信頼度は下落する。大体、お前が手に持ってる文明の利器は何のためにあるんだっつーの。上條さんに電話なりメールなりして居場所を聞けばいいだけなのに、上條さんがいるはずの場所にいなかったせいで、野分はそんな事も失念する程取り乱してしまったらしい。
かつて、野分の事で必死な上條さんをからかったりしたが、野分も十分必死過ぎて面白い。あの野分がここまで豹変するのを目の前で見て、ある種の感動すら覚えてしまう。
「先輩!」
「ハイハイ。大声出すな。上條さんには休憩室への近道教えてあげただけだって」
「近道って…。俺が普段中庭通らないの知ってるじゃないですか!」
「お前が来るなんて知らなかったんだから仕方ないだろ」
中庭の近道は、近い事は近いのだが、木が覆い茂っている部分もあったりして、使う人は限られている。
「こんな所で俺と話してないで追い掛けた方がいいんじゃないか?」
俺の言葉にハッとして、野分は中庭に飛び出す。見ると、遠くに上條さんの姿が見える。上條さん目掛けて走って行く野分はまるで、ご主人様を見つけて大喜びな犬っころのようで、思わず笑ってしまう。
野分に追いつかれた上條さんは何やら野分に怒鳴っているが、野分は幸せそうだからあれでいいんだろう。ふとこちらを見た上條さんと目が合ったので、お母さん方に人気の最上級の笑顔を浮かべて手を振ってみたが無視されてしまった。そして、更に野分に怒鳴り散らしている。からかわれた事に気付いたんだろう。
あんなに聡い人なのに、野分の事となると自分をなくしてしまう不器用さ。野分はそれだけ想われているという事に気付いているのだろうか。
端から見ればお互いベタ惚れなのは丸わかりなのに、どうにもあの二人は危なっかしい部分があって、見ていて飽きない。
また遊びに来て下さいね、上條さん。いつでも大歓迎です。
Fin.
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つもりん楽しかったです!もう少し軽い感じにしたかった気もするのですが…。本当に、エゴの二人はからかい甲斐あります。
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