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GF e-side

純情エゴイストへの愛を散らかし中。

2024'11.23.Sat
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2008'08.10.Sun
ふと、そういえば最近、野分に頭を撫でられていないな、と思った。
そんな事を考えてしまうなんて、疲れが溜まり過ぎて、思考がおかしくなっているに違いない。

大の大人の男が、同じく大人の男(しかも年下)に頭を撫でられるという事が普通ではないとは分かっているのだが、初めて会った時に俺の頭をくしゃりと撫でた手の感触が今でも忘れられない。

そして、これは口が裂けても言えないが、野分の大きな手で頭を撫でられるのは、結構好き、だったりして…。

野分の事だから、俺が寝ている間に勝手に撫でているという可能性は充分にある。しかし、面と向かって頭を撫でられるという事がここ最近全くない事に気付いたのだ。

出会った頃とは違って、俺達の関係は進展し、頭を撫でる代わりに、キスがより深い愛情表現として使われるようになった事もあるだろう。それに、俺の事だから、撫でられたら、恥ずかしくて、多分殴ってしまうような気がする…。野分はそれを察して撫でなくなったのだろうか。

でも今、精神的にも肉体的にも疲労した状態で、欲しいと思うものは、野分の手。
以前、あいつが疲労困憊していた時は、「キスしてほしいです」などと言って俺を困らせた。きっとあの時の野分と、今の俺は同じ状態なんだろう。問答無用で殴ってしまった事を少しだけ申し訳なく思うが、後で大サービスしてやったんだから、チャラだよな…?

野分と俺の決定的な違いは、して欲しい事を素直に口に出せるか否か。
例えば俺が、“年下で小柄な可愛い彼女”だったなら、抱きついて「頭を撫でて」などと甘える事ができるのだろうか、などと考えてしまう。実際には、くだらないプライドばかり高い、年上の可愛げのない男だから、そんな事は言えない。

そういえば、あの時野分がいた場所もここだったな、と足を放り出してソファに寝転がりながら思い出す。仕事から帰って来たはいいが、着替えるのも億劫で、ここに転がってしまったのだった。

野分はまだ帰っていない。なんだか無性にあいつの顔を見たい気がするが、今日はもう帰って来ないかもしれない。何日も顔を合わせない事なんてザラなのに、今日はそれをとてもキツく感じてしまうのは、やはり精神的にかなり参っているのだ。

風呂に入って、寝てしまおうと体を起こした時、リビングの扉が開いて野分が顔を出した。
「ただいまです」
ボーっとしていたせいで、玄関の鍵を開ける音に気付かなかったらしい。不意打ちで現れた、今一番会いたいヤツの顔を見て、自分でも何故だか分からないうちに涙腺が緩む。
ガキの頃じゃあるまいし、追い詰められて泣いてどうする。素早く目尻の涙を拭い、野分に見られないように顔をそむける。
「ヒロさん、どうかしましたか?」
「別に。…大あくびしただけだ」
こんな顔見せられるか。恥ずかしい。
野分と話はしたいけど、今はまともに話せる状態ではない。
「……もう寝る」
ソファから立ち上がりかけた俺の側に、野分が寄って来る気配がする。こんな顔、野分に見られたくないのに、触れて欲しいと願う、矛盾する感情が生まれる。
こちら向けて真っ直ぐ伸ばされた腕は、俺の頭の上に置かれ、初めて出会ったあの日のように、クシャクシャと頭を撫でる。温かくて大きな手で撫でられる感触が気持ち良くて、心が溶けて行く。それでも、口から出るのは素直じゃない言葉。

「な…んだよ…」
「ヒロさん、泣きそうな顔してたから…」
表情を見られたのなんて一瞬だと思っていたのに、こいつの目敏さには本当に恐れ入る。思わず野分の顔を見てしまうと、止める間もなく涙がポロポロと落ちて来てしまった。
「どうしたんですか!?何かあったんですか…!?」
「…知…るかっ!俺…だって…わかんねーよ…っ」
溢れ出す涙を止める術を知らずにしゃくりあげる俺と、そんな俺を見て、混乱する野分。
何をやってるんだ、俺は。いくら仕事が忙しく、精神的に追い詰められているといって、泣きじゃくるなんて、どうかしてる。

自分自身ですら涙が止まらない理由がはっきりしないのに、いきなり目の前で泣き出された野分も困っているだろう。
「あの…っ、もしかして、頭撫でたのが嫌でしたか…?」
「んなわけねーだろ!!」
野分の手の温もりを手放したくなくて、間髪入れずに怒鳴りつける。もう、恥ずかしいとか、みっともないとか考える余裕もなくなっていた。

俺の横に座った野分は、そのまま俺の頭を自分の胸に掻き抱く。
「大丈夫です」
降ってくる優しい声と、野分の匂いに包まれて安心する。ピンと張り詰めた心の糸がとうに切れてしまっていた俺は、野分の胸に額を押し当て、俯いたまま、ただポロポロと涙を流す。
ギュッと野分の服を掴むと、頭を撫でいるのとは反対の手で、優しく抱きしめられた。

* * *

ひとしきり泣いて、涙も枯れ果ててしまった。頭の中が奇妙にスッキリした感じがする。

……さて。涙は止まったはいいが、どんな顔をして野分の顔を見ればいいか分からない。野分は俺が泣き止んだ後も、そのまま抱きしめ、頭を撫で続けてくれている。
今、顔を上げたら、泣きはらしてグシャグシャになった顔を至近距離で見られてしまう事になり、恥ずかしい事この上ない。それに、みっともなく泣いてしまった言い訳はどうすればいいだろう。

とりあえず、顔を上げずに野分を押しのけて、そのまま洗面所に駆け込むのが一番だと考えた。
「野分、もう…大丈夫だから…」
ゴシゴシと涙を拭い、体を反転させて野分の腕の中から逃れようとしたが、あろう事か、野分は両手で俺の頬を包み、真正面から人の顔を覗きこんだ。
「わっ…馬鹿!見るな!」
「良かった。もう涙は止まったみたいですね」
嬉しそうに、柔らかく微笑む顔が目の前にあり、心拍数が上がる。

「あ。」
「何だよ?……っ!?」
何かに気付いた野分が更に顔を近づけ来た。思わず目を瞑りそうになると、野分は俺の目尻を軽く舐め上げる。
「……ッ!?何やってんだ、お前は!!」
「涙が残っていたんで。これが、本当に最後の一滴でした」
どうしてこいつは、いつもいつも、こうも恥ずかしい事を平気でするんだ…。
「手で拭けばいいだろうが!アホ!」
あまりの恥ずかしさに、野分を押しのけるようにして立ち上がり、ズカズカと洗面所に向かう。
その途中、言わなければならない事を言い忘れていた事に気付き、足を止めた。

「野分…」
「はい?」
「……ありがと、な」
頭を撫でてくれて、抱きしめてくれて、そのままの俺を受け止めてくれて、ありがとう。
「いいえ。どういたしまして」
背を向けたままだから、野分の表情は分からないが、その声音で想像はつく。いつも俺を甘やかす、見るだけで安心してしまう、優しい笑顔。

明日からも、また、頑張れる気がした。

Fin

--
ただ、ヒロさんを泣かせたかった話。書いてる途中で愛エゴを読んでしまったり、風間祭りが来たせいで、若干弘樹さんっぽくなってしまった気がします。
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