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純情エゴイストへの愛を散らかし中。

2024'11.27.Wed
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2008'08.04.Mon
ふわふわ、ゆらゆらと、何もない空間に漂っている。
これは夢だと理解していて、そのまま身を任せていれば、自然と目が覚める事も分かっている。

真っ白な世界に俺は一人だったけど、別段それを淋しいと思った事もなかったし、それが“淋しい”状況なのかも分からなかった。

特に幸せでもなければ、不幸でもない、繰り返す単調な日々。漠然と、ずっとそんな日々が続くのだろうと思っていたある日、あの公園で、泣いているヒロさんに出会った。

ヒロさんの涙が、俺のいる真っ白な世界にも一滴落ちたに違いない。
白くて何もない場所だったのに、ヒロさんを中心にしてさざ波が生まれた。

ヒロさんには泣かないで欲しいと願っているけど、実は、ヒロさんの泣き顔は好きだ。とても綺麗な涙を見ると、愛しくてたまらなくなる。
今は、ヒロさんの涙を見る事ができるのは、俺だけの特権。泣かせたくて泣かせているわけではない。でも、涙を浮かべたあの顔で煽る、ヒロさんがいけない。

もし、ヒロさんがいなくなってしまったらどうしよう、きっと俺は生きていけなくなってしまう…なんて考えながら寝たのがいけなかった。

久しぶりに、真っ白な空間を一人で漂う夢を見た。昔は別になんて事のない夢だったのに、今は不安で仕方なくなる。
理由は簡単。ヒロさんがいないから。
何もない空間で、必死に手足をばたつかせてもがく。心の奥底では、そのまま身を任せていれば目を覚ます事を知っているのに、ヒロさんを探さずにはいられない。
永遠にも感じられる程の間、もがき続けていると、どこかでかすかにさざ波が立ったような気がした。

『………き。…の……わき…』

ヒロさんの声がする!
俺を呼ぶヒロさんの声を感じ取った瞬間、大きな波紋が広がり、白い空間はパリン、と音を立てて、壊れた。

「……っ!」
ハッと目が覚める。
目の前には、ヒロさんの顔。これが夢なのか現実なのかはっきりしない。
「野分?大丈夫か?」
「あ、はい…」
軽く肩を揺すられ、目が覚めた事を理解する。隣に寝ていたヒロさんを起こしてしまったらしい。
半身を起こして、心配そうな顔で俺の顔を覗き込んでいるヒロさん。
「なんかうなされてたぞ。変な夢でも見たか?」
ヒロさんが近くにいる事に安心し、そのまま、ヒロさんを腕の中に掻き抱く。
「…わっ…!何しやがるっ」
「良かった。ヒロさんがいてくれて…」
「?」
「どこにも行かないで下さいね」
ヒロさんと離れたくなくて、抱きしめる腕に力を込めた。
「…こんな風にとっ捕まってたら、行きたくても行けねえよ」
言葉は悪いけど、力を抜いて体重を預けてくれるのが嬉しい。

ヒロさんの温もりと、伝わって来る心音が心地良くて、うとうとして来る。腕の中のヒロさんは、もう寝息を立てている。俺も、もう眠ろう。朝まではまだ時間がある。

もしまた、あの真っ白な空間に迷い込んだとしても、ヒロさんが呼び戻してくれるから大丈夫。この愛しい人を決して手放さないように、抱きしめる腕に力を込めた。


Fin

--
書いてる時のイメージでは、パジャマ着て一緒に寝てるイメージでしたが、読み返してみると、“温もりと、伝わって来る心音”とか書いたから、裸で寝てる状態でもいいかなーと思いました。読んだ時の第一印象にお任せします(笑)。
お題は『綺羅星-Kiraboshi-』様から頂きました。
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