GF e-side
純情エゴイストへの愛を散らかし中。
2008'06.11.Wed
別に、手をつなぐのが嫌なわけじゃない。
――ただ、恥ずかしいだけで。
――ただ、恥ずかしいだけで。
初めて野分を意識したのは、あの手だったと思う。俺の頭をクシャリと撫でた大きな手。
まあ、最初はその手に秋彦を重ねていたから、野分にとっては失礼な話なわけだが、あの時の俺は失恋した直後でとても弱っていたから…という事で許して欲しい。
野分の手は、大きくて温かい。ズルズルと引きずっていた秋彦への想いを断ち切ってくれたのも、あの手だった。
俺を、野分以外見えなくする。
が、それとこれとは話が別だ。
「ヒロさんは冷たいです…」
「冷たくて結構」
今まで何度このやり取りを繰り返したか分からない。人通りの多い往来で、手を繋ぎたがる野分と、嫌がる俺。何も、俺に触るなと言っているわけではない。時と場所を考えろと言っているんだ。
それでも引き下がらない野分。
「だって…ヒロさんに触れたくなったから」
「今じゃなくてもいいだろ」
「今、触れたいんです。俺、これでも我慢してるんですよ?本当だったら、抱きしめてキスしたい位なんですから」
「…ここでそんな事したら、本気で殴るぞ?!」
「分かってます…。だから、手を繋ぐだけで我慢しようと思っているんです」
「わかってねえ!」
並んで歩いていたら手を繋がれてしまいそうで、野分を振り払うように早足で歩く。手を繋がれ、そのまま流されてしまいそうな自分が嫌だった。
野分の手は、好きだ。手を重ねる事だって嫌いじゃない。触れたいと思うし、触れられたいとも思う。
しかし、ここで流されてしまうのは大人のやる事ではない。ガキな野分と違って、大人の俺には、自制心というものがある。 こんな人通りが多い所でイチャイチャと手なんか繋げるものか!
歩くスピードを上げ、半ば走るようにして突き進む俺の耳に、突如飛び込んで来たのは、鋭いクラクションの音と、野分の声。
「危ないっ!」
腕を掴まれ、すごい力で後ろに引っ張られ、視界がぐるぐる回る。
何だ?一体何が起こった?
「信号、赤ですよ」
状況を把握できない俺に、野分が教えてくれる。目の前には行き交う車の群れ。考え事をしながら、赤信号に突っ込んで行ったらしい。大人だなんだと言っているくせに、走って飛び出すなんて子供そのものじゃないか…、と軽く凹む。
野分が、はぁ、と一つ溜め息をついた。
「ヒロさんは、危なっかしいです」
「うるせえ…」
車に轢かれそうになったところを助けてもらったばかりなので、あまり強く出られない。
「だから」
「俺がちゃんとヒロさんを見張ってますね」
笑みを浮かべた野分が俺に見せたのは、しっかり繋がれた二人の手。
しまった…。いつの間に繋がれたんだろう。
「てめっ!離せっ!!」
手を振り払おうとするが、野分の力は強く、簡単には離してくれそうにない。
「駄目です。離しません。また、赤信号に突っ込んで行ったら大変です」
「突っ込まねーよ!」
信号の前で口喧嘩を始めた二人に、周囲の視線が集まるのを感じる。俺の手は野分に握られたままで、余計に恥ずかしい。
「離せっつってんだろ!」
「心配なんです!!」
恥ずかしすぎて思わず声を荒げた俺の声を掻き消すように野分も声を上げ、そのあまりの真剣な口調と眼差しに、思わず言葉を失くした。声を張り上げているのに、泣きそうな顔の野分。
自分で思っていた以上に、野分に心配をかけてしまったらしい事に気付く。目の前で、俺が車に轢かれそうになって、野分はどんな思いをしただろう。逆に、もし俺の目の前で野分が轢かれそうになったら…と考えると、野分の今の気持ちが理解できる。こんなにも心配してくれた事に対し、申し訳なく思うと同時に、それだけ想われているのだという事を実感でき、嬉しくもなる。
「…すまん」
野分の心情を慮ると、自然と謝罪の言葉が口をついて出た。
「ヒロさんが怪我しなかったから、いいんです。あ、信号、青になりましたよ。渡りましょう」
野分に手を引かれて信号を渡る。恥ずかしい事に変わりはないが、恥ずかしさよりも、このまま手を繋いでいたいという誘惑の方が勝ってしまう。
…だから嫌だったんだ。一度繋ぐと、もう、この温もりを手放したくなくなってしまう。
野分と一緒にいる時の俺はおかしい。俺は、周囲の目もはばからずに手など繋げるような人間ではなかったはずだ。
全部、野分のせいだ。野分が、俺に野分しか見えなくしてしまうからいけないんだ、などと恥ずかしさを誤魔化す為に、自分の行為を正当化しようと考える。
そして、野分の手の温もりを感じながら、結局俺は、野分の事が大好きなんだなぁ、としみじみと思った。
Fin.
--
2巻のピンナップの、手を繋いでる二人が大好きです。野分の手フェチかもしれない…。
お題は『綺羅星-Kiraboshi-』様から頂きました。
まあ、最初はその手に秋彦を重ねていたから、野分にとっては失礼な話なわけだが、あの時の俺は失恋した直後でとても弱っていたから…という事で許して欲しい。
野分の手は、大きくて温かい。ズルズルと引きずっていた秋彦への想いを断ち切ってくれたのも、あの手だった。
俺を、野分以外見えなくする。
が、それとこれとは話が別だ。
「ヒロさんは冷たいです…」
「冷たくて結構」
今まで何度このやり取りを繰り返したか分からない。人通りの多い往来で、手を繋ぎたがる野分と、嫌がる俺。何も、俺に触るなと言っているわけではない。時と場所を考えろと言っているんだ。
それでも引き下がらない野分。
「だって…ヒロさんに触れたくなったから」
「今じゃなくてもいいだろ」
「今、触れたいんです。俺、これでも我慢してるんですよ?本当だったら、抱きしめてキスしたい位なんですから」
「…ここでそんな事したら、本気で殴るぞ?!」
「分かってます…。だから、手を繋ぐだけで我慢しようと思っているんです」
「わかってねえ!」
並んで歩いていたら手を繋がれてしまいそうで、野分を振り払うように早足で歩く。手を繋がれ、そのまま流されてしまいそうな自分が嫌だった。
野分の手は、好きだ。手を重ねる事だって嫌いじゃない。触れたいと思うし、触れられたいとも思う。
しかし、ここで流されてしまうのは大人のやる事ではない。ガキな野分と違って、大人の俺には、自制心というものがある。 こんな人通りが多い所でイチャイチャと手なんか繋げるものか!
歩くスピードを上げ、半ば走るようにして突き進む俺の耳に、突如飛び込んで来たのは、鋭いクラクションの音と、野分の声。
「危ないっ!」
腕を掴まれ、すごい力で後ろに引っ張られ、視界がぐるぐる回る。
何だ?一体何が起こった?
「信号、赤ですよ」
状況を把握できない俺に、野分が教えてくれる。目の前には行き交う車の群れ。考え事をしながら、赤信号に突っ込んで行ったらしい。大人だなんだと言っているくせに、走って飛び出すなんて子供そのものじゃないか…、と軽く凹む。
野分が、はぁ、と一つ溜め息をついた。
「ヒロさんは、危なっかしいです」
「うるせえ…」
車に轢かれそうになったところを助けてもらったばかりなので、あまり強く出られない。
「だから」
「俺がちゃんとヒロさんを見張ってますね」
笑みを浮かべた野分が俺に見せたのは、しっかり繋がれた二人の手。
しまった…。いつの間に繋がれたんだろう。
「てめっ!離せっ!!」
手を振り払おうとするが、野分の力は強く、簡単には離してくれそうにない。
「駄目です。離しません。また、赤信号に突っ込んで行ったら大変です」
「突っ込まねーよ!」
信号の前で口喧嘩を始めた二人に、周囲の視線が集まるのを感じる。俺の手は野分に握られたままで、余計に恥ずかしい。
「離せっつってんだろ!」
「心配なんです!!」
恥ずかしすぎて思わず声を荒げた俺の声を掻き消すように野分も声を上げ、そのあまりの真剣な口調と眼差しに、思わず言葉を失くした。声を張り上げているのに、泣きそうな顔の野分。
自分で思っていた以上に、野分に心配をかけてしまったらしい事に気付く。目の前で、俺が車に轢かれそうになって、野分はどんな思いをしただろう。逆に、もし俺の目の前で野分が轢かれそうになったら…と考えると、野分の今の気持ちが理解できる。こんなにも心配してくれた事に対し、申し訳なく思うと同時に、それだけ想われているのだという事を実感でき、嬉しくもなる。
「…すまん」
野分の心情を慮ると、自然と謝罪の言葉が口をついて出た。
「ヒロさんが怪我しなかったから、いいんです。あ、信号、青になりましたよ。渡りましょう」
野分に手を引かれて信号を渡る。恥ずかしい事に変わりはないが、恥ずかしさよりも、このまま手を繋いでいたいという誘惑の方が勝ってしまう。
…だから嫌だったんだ。一度繋ぐと、もう、この温もりを手放したくなくなってしまう。
野分と一緒にいる時の俺はおかしい。俺は、周囲の目もはばからずに手など繋げるような人間ではなかったはずだ。
全部、野分のせいだ。野分が、俺に野分しか見えなくしてしまうからいけないんだ、などと恥ずかしさを誤魔化す為に、自分の行為を正当化しようと考える。
そして、野分の手の温もりを感じながら、結局俺は、野分の事が大好きなんだなぁ、としみじみと思った。
Fin.
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2巻のピンナップの、手を繋いでる二人が大好きです。野分の手フェチかもしれない…。
お題は『綺羅星-Kiraboshi-』様から頂きました。
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