GF e-side
純情エゴイストへの愛を散らかし中。
2008'07.21.Mon
風鈴をもらったので、ベランダに吊してみた。
チリンチリン、と軽やかな音がする。
チリンチリン、と軽やかな音がする。
今日は、俺とヒロさんの休みが珍しく重なった。
折角だから、どこかへ出掛けるという選択肢もあったけど、目が覚めたのが昼過ぎで、太陽はギラギラと照りつけていて、更に、昨晩ちょっと無理させてしまったせいで、ヒロさんに「体中が痛い」と文句を言われてしまった事もあり、一日中クーラーの効いている家の中で過ごす事にした。
朝昼兼用の食事を取った後、ヒロさんは読みかけの本があるという事で、読書に集中にしている。俺はもっとヒロさんに触れていたかったけど、読書の邪魔をすると怒られてしまうので、大人しく、読書をしているヒロさんを眺めるだけにする。
「………なんだよ」
しばらく経って、俺の視線に気付いたヒロさんが、何か言いたげに睨みつけてきた。
「何ですか?」
「さっきからジーッと見つめてんだろ?!気が散るんだよ」
「見てるだけですから、気にしないで下さい。邪魔はしません」
「…………」
俺から視線を外し、読書を再開したヒロさんだったけど、耳が真っ赤になってしまって、明らかに集中できていない。本当に、可愛いなぁ。
「…お前のせいで集中が途切れた」
本の表紙を乱暴に閉じ、文句を言って来る。
「俺、邪魔してませんよ」
「この前借りたDVD見る」
そういえば、借りたはいいけど時間がなくてまだ見られていないDVDがあったっけ。DVDをセットして、ソファに並んで二人で見る事にする。
「…少し、エアコン効きすぎてるよな」
DVDも中盤に差し掛かる頃、ヒロさんが呟いた。
「温度上げますか?」
「…………違う」
ああ、そうか。相変わらずヒロさんらしい言い方で、思わず頬が緩む。
ヒロさんにぴたりとくっついて、手を握った。
「これで寒くないですか?」
返事はなかったけど、俺の肩に頭を載せて、ぎゅっと手を握り返してくれたのを返事だと解釈した。
DVDを見終わる頃には、もう夕方になっていた。
「体がだるい…」
ヒロさんがぐったりとソファの背もたれに体を預けている。
「ああ、ずっとクーラーの効いた部屋にいましたからね。もう涼しくなっているでしょうから、窓開けますね」
ヒロさんと離れるのは後ろ髪ひかれる思いだったけど、エアコンを消して、窓を開ける。予想通り、昼間の暑さは消え、涼しげな風が入って来て、風鈴を揺らす。
「ん?風鈴か」
「ええ、貰ったんです」
「たまに聴くと、なんかいいな」
そよそよと入ってくる風に、茶色い髪を揺らして、気持ち良さそうにしていたヒロさんは、何かを思いついたように立ち上がった。
「ビール、買い置きあったよな。なんか、飲みたい気分だ」
言いながら、ゴソゴソと冷蔵庫を漁っている。
「ええ、あります。じゃあ俺、何かつまみになるようなもの作りますね」
残り物がいくつかあったはずだから、簡単なつまみなら作れるだろう。
「悪いな。俺はセッティングでもするか」
セッティングって何だろう?と思っていたら、ヒロさんは座卓を持って、窓際に寄せている。
「風鈴の音を楽しみながら飲むってのもいいんじゃないかと思ったんだよ」
「ああ、いいですね」
暑い夏の一日の終わりにはぴったりのような気がする。
二人で支度を整えて、ビールで乾杯。外はまだ若干明るかったので、電気は付けない。少し薄暗い方が風情があっていい。時折入ってくる風に揺らされた風鈴が奏でる音に耳を傾けながら、二人きりの時間を楽しむ。ヒロさんと、こんなにゆったりと過ごすのは、本当に久しぶりかもしれない。
何本かビールを空けて、ほろ酔い加減になったヒロさんは、フローリングの床に転がって、冷たさを楽しんでいるようだ。
そういえば、以前宇佐見さんが、ヒロさんは酔うと余計な事までペラペラ喋ると言っていた。確かに、普段よりは饒舌にはなるけど、“余計な事”と思われる事は口にしていない。一体どんな話をしているのだろう。
ヒロさんが酔っているのに乗じて、その疑問を投げ掛けてみる。
「何言ってんだ?野分相手に、野分の話をしたって仕方ないだろ」
思った通り、酔って機嫌の良いヒロさんは素直に答えてくれた。でも、それって…。
「宇佐見さんには、俺の話をしてるって事ですか?」
「そーだよ。悪いか。あいつさ、ぜってー、俺の事が羨ましいんだ。あいつにも恋人いるらしいけど、俺ほど幸せそうには見えないもんなー」
ヒロさんは、ゴロンと仰向けになって、変な笑い声をあげながら、宇佐見さんに対して失礼な事を言っている。結構酔いが回っているみたいだ。
「……ヒロさんは、俺と一緒にいて幸せって事ですか?」
酔っている相手に質問するのは卑怯な気がしたけれど、答えが聞きたくて、思わず聞いてしまう。
「幸せだ。お前がいてくれれば、いい」
予想していた以上の答えをもらってしまった…。ヒロさんの事だから、酔いが醒めたら、こんな事を言ったなんて忘れてしまうに違いない。それでも、これがヒロさんの本心である事に変わりはないだろう。
「俺もヒロさんがいれば…。……ヒロさん?」
俺の気持ちも伝えようとしたのに、ヒロさんは目を瞑って寝息を立てている。言いたい事だけ言って寝てしまったらしい。無防備な寝顔を見ると、この人が好きだという気持ちがこみ上げてくる。
「俺も、幸せです」
寝ているヒロさんに顔を近付け、愛しいという想いを込めて、キスをする。
唇が重なる瞬間、風鈴がチリン、と涼しげな音を鳴らすのが聞こえた。
Fin
--
夏はこれからだというのに夏の終わりみたいな話を書いてしまいました…。
たまにはゆったりと二人の時間を楽しませてあげたいです。
折角だから、どこかへ出掛けるという選択肢もあったけど、目が覚めたのが昼過ぎで、太陽はギラギラと照りつけていて、更に、昨晩ちょっと無理させてしまったせいで、ヒロさんに「体中が痛い」と文句を言われてしまった事もあり、一日中クーラーの効いている家の中で過ごす事にした。
朝昼兼用の食事を取った後、ヒロさんは読みかけの本があるという事で、読書に集中にしている。俺はもっとヒロさんに触れていたかったけど、読書の邪魔をすると怒られてしまうので、大人しく、読書をしているヒロさんを眺めるだけにする。
「………なんだよ」
しばらく経って、俺の視線に気付いたヒロさんが、何か言いたげに睨みつけてきた。
「何ですか?」
「さっきからジーッと見つめてんだろ?!気が散るんだよ」
「見てるだけですから、気にしないで下さい。邪魔はしません」
「…………」
俺から視線を外し、読書を再開したヒロさんだったけど、耳が真っ赤になってしまって、明らかに集中できていない。本当に、可愛いなぁ。
「…お前のせいで集中が途切れた」
本の表紙を乱暴に閉じ、文句を言って来る。
「俺、邪魔してませんよ」
「この前借りたDVD見る」
そういえば、借りたはいいけど時間がなくてまだ見られていないDVDがあったっけ。DVDをセットして、ソファに並んで二人で見る事にする。
「…少し、エアコン効きすぎてるよな」
DVDも中盤に差し掛かる頃、ヒロさんが呟いた。
「温度上げますか?」
「…………違う」
ああ、そうか。相変わらずヒロさんらしい言い方で、思わず頬が緩む。
ヒロさんにぴたりとくっついて、手を握った。
「これで寒くないですか?」
返事はなかったけど、俺の肩に頭を載せて、ぎゅっと手を握り返してくれたのを返事だと解釈した。
DVDを見終わる頃には、もう夕方になっていた。
「体がだるい…」
ヒロさんがぐったりとソファの背もたれに体を預けている。
「ああ、ずっとクーラーの効いた部屋にいましたからね。もう涼しくなっているでしょうから、窓開けますね」
ヒロさんと離れるのは後ろ髪ひかれる思いだったけど、エアコンを消して、窓を開ける。予想通り、昼間の暑さは消え、涼しげな風が入って来て、風鈴を揺らす。
「ん?風鈴か」
「ええ、貰ったんです」
「たまに聴くと、なんかいいな」
そよそよと入ってくる風に、茶色い髪を揺らして、気持ち良さそうにしていたヒロさんは、何かを思いついたように立ち上がった。
「ビール、買い置きあったよな。なんか、飲みたい気分だ」
言いながら、ゴソゴソと冷蔵庫を漁っている。
「ええ、あります。じゃあ俺、何かつまみになるようなもの作りますね」
残り物がいくつかあったはずだから、簡単なつまみなら作れるだろう。
「悪いな。俺はセッティングでもするか」
セッティングって何だろう?と思っていたら、ヒロさんは座卓を持って、窓際に寄せている。
「風鈴の音を楽しみながら飲むってのもいいんじゃないかと思ったんだよ」
「ああ、いいですね」
暑い夏の一日の終わりにはぴったりのような気がする。
二人で支度を整えて、ビールで乾杯。外はまだ若干明るかったので、電気は付けない。少し薄暗い方が風情があっていい。時折入ってくる風に揺らされた風鈴が奏でる音に耳を傾けながら、二人きりの時間を楽しむ。ヒロさんと、こんなにゆったりと過ごすのは、本当に久しぶりかもしれない。
何本かビールを空けて、ほろ酔い加減になったヒロさんは、フローリングの床に転がって、冷たさを楽しんでいるようだ。
そういえば、以前宇佐見さんが、ヒロさんは酔うと余計な事までペラペラ喋ると言っていた。確かに、普段よりは饒舌にはなるけど、“余計な事”と思われる事は口にしていない。一体どんな話をしているのだろう。
ヒロさんが酔っているのに乗じて、その疑問を投げ掛けてみる。
「何言ってんだ?野分相手に、野分の話をしたって仕方ないだろ」
思った通り、酔って機嫌の良いヒロさんは素直に答えてくれた。でも、それって…。
「宇佐見さんには、俺の話をしてるって事ですか?」
「そーだよ。悪いか。あいつさ、ぜってー、俺の事が羨ましいんだ。あいつにも恋人いるらしいけど、俺ほど幸せそうには見えないもんなー」
ヒロさんは、ゴロンと仰向けになって、変な笑い声をあげながら、宇佐見さんに対して失礼な事を言っている。結構酔いが回っているみたいだ。
「……ヒロさんは、俺と一緒にいて幸せって事ですか?」
酔っている相手に質問するのは卑怯な気がしたけれど、答えが聞きたくて、思わず聞いてしまう。
「幸せだ。お前がいてくれれば、いい」
予想していた以上の答えをもらってしまった…。ヒロさんの事だから、酔いが醒めたら、こんな事を言ったなんて忘れてしまうに違いない。それでも、これがヒロさんの本心である事に変わりはないだろう。
「俺もヒロさんがいれば…。……ヒロさん?」
俺の気持ちも伝えようとしたのに、ヒロさんは目を瞑って寝息を立てている。言いたい事だけ言って寝てしまったらしい。無防備な寝顔を見ると、この人が好きだという気持ちがこみ上げてくる。
「俺も、幸せです」
寝ているヒロさんに顔を近付け、愛しいという想いを込めて、キスをする。
唇が重なる瞬間、風鈴がチリン、と涼しげな音を鳴らすのが聞こえた。
Fin
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夏はこれからだというのに夏の終わりみたいな話を書いてしまいました…。
たまにはゆったりと二人の時間を楽しませてあげたいです。
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