エゴSS『草間と中條』

相手が中條さんだと分かってて、手を出してはいけないと頭では分かってるし、手を出すつもりなんか全くなかったんだけど、中條さんがふとした瞬間に見せた表情にヒロさんを見出し、思わずキスしてしまう草間……とかいう夢を見た…。なんだその夢。

ので、折角だからその話を形にしてみました（ぇ

＊　＊　＊

あの人は、ヒロさんじゃない。

何が起こったか分からないけど、俺の目の前からヒロさんさんがいなくなってしまい、代わりに現れたのは、見た目はヒロさんにそっくりな中條弘樹さん。話を聞くと、中條さんは別の世界で、俺にそっくりな風間野分という人物と暮らしているらしい。

中條さんはヒロさんよりも少し儚げな感じがする。不安そうにしている中條さんを、早く元の世界に返してあげたい（そして、そちらの世界にいると思われる、俺のヒロさんを取り戻したい）のだけど、その方法も分からずに、無駄に日数だけが経ってしまった。

ヒロさんと同じ顔をした別人との奇妙な共同生活。一応、知らない人との生活という事になるのだけど、姿がヒロさんだから、嫌だとかいう気持ちはない。ただ、少し落ち着かないだけ。

中條弘樹さんはヒロさんとは違う人だという事をしっかり意識していないと、いつか抑制が効かなくなりそうで怖かった。だから、必要以上に近付かないし、中條さんが夜静かに泣いているのを知った時も、気付かないふりをした。なのに…。

何気ない会話の中、中條さんがふと見せた表情があまりにもヒロさんに似ていて、感情を抑える間もなく、ヒロさんにするように、自然とキスをしてしまった。
抵抗されたり、はねのけられたりすれば良かった。だけど、ぎゅっと目を瞑ってしまった中條さんは、ますますヒロさんにそっくりで、唇を離す事ができなくなってしまう。

深い深い、何かを、誰かを探し求めるようなキス。お互いの息遣いと、濡れた音しか聞こえない。

どちらからともなく唇を離し、現実に引き戻される。
「……すみません」
「いや…」
気まずそうに中條さんが顔をそむけた。

後に残ったのは、罪悪感と喪失感。
そして、早くヒロさんに会いたいという焦燥感だけだった。


Fin.

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風間ｖｓ上條はギャーギャー大喧嘩になるだろうに、草間×中條にしちゃうと、なんだか背徳的な感じで暗くなりました…。草間と中條はほのぼのしててほしいですね。草間は中條に手を出してはいけない、みたいな暗黙の了解がありそうな気もしますが…大丈夫かな…。