GF e-side
純情エゴイストへの愛を散らかし中。
2008'06.18.Wed
家に持ち帰った仕事をこなしている途中、コーヒーでも飲むかと思っていると、目の前にカップが差し出された。まさに、今飲みたいと思っていたもの。
「ヒロさん、お疲れかと思って」
「おう、サンキュ」
コーヒーを煎れてくれたのは勿論、野分。味もきちんと俺好みのものになっていて、おいしい。
「ヒロさん、お疲れかと思って」
「おう、サンキュ」
コーヒーを煎れてくれたのは勿論、野分。味もきちんと俺好みのものになっていて、おいしい。
気付けば、こういう事が多々あるような気がする。何かしようと思っていたら、先に野分がそれをしてくれたり、どこかに行きたいと思っていたら、俺が言う前に野分がそこに行きたいと言い出したり。
俺ってそんなに分かりやすいのか?と思ったりもするが、どうやらそれだけでもないらしい。
(まあ、これだけ長く付き合っていれば、相手の考えてる事もなんとなく分かるようになるか)
もうあと何年か経ったら、どこぞやの熟年夫婦みたいに、『おい』とか『それ』とかで会話が成り立つようになってしまう気がする。
……いやいや、夫婦って何だ…。
その割に、野分は自分の事を悟らせないところがある。元から何を考えているか分からない事が多い奴だったが、7年経っても分からない事が結構多い。
コーヒーを運んで来た野分は、もう俺の前にはいない。一息つきたい時には察して話し相手になってくれるが、今みたいに仕事を集中して片付けたいと思っている時は、余計な事は一切言わないし、邪魔もしない。大学では教授に邪魔ばかりされている(その上、あの教授は自分の仕事は手伝わせる)ので、正直とてもありがたい。
反面、俺は、この状況に甘えすぎているのではないだろうかという気持ちになる。野分が俺の事を察してくれるように、俺も野分の事をもっと察してやる事ができればいいのに。
* * *
今日の食事当番は俺。俺が当番の時は、相変わらずレトルトが多いが、今回は気が向いてスープなんかを作ってみた。まあ、不味くもなければ特に美味しいわけでもない。しかし、野分は俺がレトルト以外のものを作った時は、特に喜んで食べてくれる。
今日も、早速、嬉しそうにスープに口を付けようとする野分。
「…って、ちょっと待て!」
野分がスープを口にする前に慌てて止める。
「なんですか?」
「お前、猫舌なんだから、ちゃんと冷ましてから飲め」
こいつは猫舌のくせに、冷まさずに食べて、しょっちゅう火傷をしたりしている。誰も取ったりしないのに、どうしてこうも急いで食べたがるんだか。
「何、笑ってんだよ…」
気付くと、野分が俺の方を見て笑みを浮かべている。
「ヒロさんが俺の事を気にかけてくれているのが嬉しいなーって」
「別に、いつも見てりゃ分かるだろ」
自分で言った言葉にハッとする。
そうか。特別に意識している訳じゃなくても、年月を積み重ねる事によって、自然と相手を理解して行っている部分はある。無理して相手に合わせているのではなく、無意識のうちに相手を思いやっている。野分も、俺の事をこうやって理解してきたのか?
俺も、少しは野分にとって心地良い空間を提供できているだろうかと不安になり、野分に視線を戻すと、何故だかさっきよりも嬉しそうにしている。
「たまに、ヒロさんはどうして俺の考えてる事が分かるのかな、って不思議に思っていたんです。
俺の事、いつも見ててくれたんですね。嬉しいです」
……なんだ。こいつも同じように思っていたのか。
という事は、俺も、野分が言わない部分をちゃんと分かってやってると思っていいんだよな?
お互い、相手が自分の考えている事を察しているのを不思議に思いながらも、自分がしているように、相手も無意識に自分の事を理解して行動している、という事に考えが及んでいなかったというわけか。
結局、相手の事を考えて行動するという事がとても自然に行われているという事で、それは、すごく幸せな事なんじゃないだろうか。恥ずかしい言い方をすれば、『カップルの理想のあり方』みたいな…?
などと考えていたら、どうしようもなく恥ずかしくなって来てしまった。
照れ隠しに、テーブルの席につき、先ほどの言葉に注釈をつける。
「“いつも”と言っても、四六時中見てるわけじゃないぞ?!」
「俺、ヒロさんになら24時間監視されてもいいですよ」
なんでもない事のような顔をして、さらりと恐ろしい事を言う奴だ。余計恥ずかしくなるような事を言いやがって…。
「俺はそんなに暇じゃねーよ。くだらない事言ってないで、さっさと食え」
「さっきはゆっくり食べろって言ったじゃないですか…」
「もう充分冷めただろ!食わないんだったら下げるぞ?」
「あ!酷いです!食べるに決まってるじゃないですか!」
スープを下げようとする俺と、抵抗する野分。
こんな他愛ないやり取りをして、もっと互いを理解し合えるようになるなら、それもいいな、なんて思ったりした。
Fin.
--
ちょっと小難しくこねくり回しすぎました…。お題に矛盾してしまっているような気もしますが、長年一緒にいると、意識して相手の考えてる事を分かろうとしなくても、自然と分かっちゃう部分も結構あるんですよ、みたいな事が書きたかったのです。だから、『愛の観察眼』は、無意識のうちに行われている、という事で。
ヒロさんが言ってる『おい』とか『それ』は某インタビューでイトケンがエゴ組の二人について語った時に言ってた事です(笑)。
お題は『綺羅星-Kiraboshi-』様から頂きました。
俺ってそんなに分かりやすいのか?と思ったりもするが、どうやらそれだけでもないらしい。
(まあ、これだけ長く付き合っていれば、相手の考えてる事もなんとなく分かるようになるか)
もうあと何年か経ったら、どこぞやの熟年夫婦みたいに、『おい』とか『それ』とかで会話が成り立つようになってしまう気がする。
……いやいや、夫婦って何だ…。
その割に、野分は自分の事を悟らせないところがある。元から何を考えているか分からない事が多い奴だったが、7年経っても分からない事が結構多い。
コーヒーを運んで来た野分は、もう俺の前にはいない。一息つきたい時には察して話し相手になってくれるが、今みたいに仕事を集中して片付けたいと思っている時は、余計な事は一切言わないし、邪魔もしない。大学では教授に邪魔ばかりされている(その上、あの教授は自分の仕事は手伝わせる)ので、正直とてもありがたい。
反面、俺は、この状況に甘えすぎているのではないだろうかという気持ちになる。野分が俺の事を察してくれるように、俺も野分の事をもっと察してやる事ができればいいのに。
* * *
今日の食事当番は俺。俺が当番の時は、相変わらずレトルトが多いが、今回は気が向いてスープなんかを作ってみた。まあ、不味くもなければ特に美味しいわけでもない。しかし、野分は俺がレトルト以外のものを作った時は、特に喜んで食べてくれる。
今日も、早速、嬉しそうにスープに口を付けようとする野分。
「…って、ちょっと待て!」
野分がスープを口にする前に慌てて止める。
「なんですか?」
「お前、猫舌なんだから、ちゃんと冷ましてから飲め」
こいつは猫舌のくせに、冷まさずに食べて、しょっちゅう火傷をしたりしている。誰も取ったりしないのに、どうしてこうも急いで食べたがるんだか。
「何、笑ってんだよ…」
気付くと、野分が俺の方を見て笑みを浮かべている。
「ヒロさんが俺の事を気にかけてくれているのが嬉しいなーって」
「別に、いつも見てりゃ分かるだろ」
自分で言った言葉にハッとする。
そうか。特別に意識している訳じゃなくても、年月を積み重ねる事によって、自然と相手を理解して行っている部分はある。無理して相手に合わせているのではなく、無意識のうちに相手を思いやっている。野分も、俺の事をこうやって理解してきたのか?
俺も、少しは野分にとって心地良い空間を提供できているだろうかと不安になり、野分に視線を戻すと、何故だかさっきよりも嬉しそうにしている。
「たまに、ヒロさんはどうして俺の考えてる事が分かるのかな、って不思議に思っていたんです。
俺の事、いつも見ててくれたんですね。嬉しいです」
……なんだ。こいつも同じように思っていたのか。
という事は、俺も、野分が言わない部分をちゃんと分かってやってると思っていいんだよな?
お互い、相手が自分の考えている事を察しているのを不思議に思いながらも、自分がしているように、相手も無意識に自分の事を理解して行動している、という事に考えが及んでいなかったというわけか。
結局、相手の事を考えて行動するという事がとても自然に行われているという事で、それは、すごく幸せな事なんじゃないだろうか。恥ずかしい言い方をすれば、『カップルの理想のあり方』みたいな…?
などと考えていたら、どうしようもなく恥ずかしくなって来てしまった。
照れ隠しに、テーブルの席につき、先ほどの言葉に注釈をつける。
「“いつも”と言っても、四六時中見てるわけじゃないぞ?!」
「俺、ヒロさんになら24時間監視されてもいいですよ」
なんでもない事のような顔をして、さらりと恐ろしい事を言う奴だ。余計恥ずかしくなるような事を言いやがって…。
「俺はそんなに暇じゃねーよ。くだらない事言ってないで、さっさと食え」
「さっきはゆっくり食べろって言ったじゃないですか…」
「もう充分冷めただろ!食わないんだったら下げるぞ?」
「あ!酷いです!食べるに決まってるじゃないですか!」
スープを下げようとする俺と、抵抗する野分。
こんな他愛ないやり取りをして、もっと互いを理解し合えるようになるなら、それもいいな、なんて思ったりした。
Fin.
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ちょっと小難しくこねくり回しすぎました…。お題に矛盾してしまっているような気もしますが、長年一緒にいると、意識して相手の考えてる事を分かろうとしなくても、自然と分かっちゃう部分も結構あるんですよ、みたいな事が書きたかったのです。だから、『愛の観察眼』は、無意識のうちに行われている、という事で。
ヒロさんが言ってる『おい』とか『それ』は某インタビューでイトケンがエゴ組の二人について語った時に言ってた事です(笑)。
お題は『綺羅星-Kiraboshi-』様から頂きました。
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