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GF e-side

純情エゴイストへの愛を散らかし中。

2024'11.23.Sat
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2008'09.13.Sat
野分が突然、
「ヒロさんのファーストキスはいつだったんですか?」
などと言うから、思わず手に持っていた本を投げつけてしまった。
なんだその思春期の女の子のような質問は…。

まあ、女ではないがまだガキで、単に付き合い始めたばかりの恋人について知りたいという純粋な好奇心から出た質問だったんだと思う。それに対して過剰に反応し過ぎてしまった自分が少し恥ずかしい。

しかし、俺のファーストキスの相手といえば、恋愛感情がなかったとはいえ秋彦なわけで、野分は俺が秋彦に片思いしていた事も知っていて…。別に今、秋彦とどうこうというやましい気持ちは全くないが、やはり野分にそれを知られたくなかった。

「本投げるなんて酷いです…」
「うるせー!お前が変な事言うからだろーが!」
野分は、本が当たった部分をさすりながら、こちらを見ている。
相変わらず表情が乏しいから、何を考えているかいまいち分からない。
「変な事じゃないです。好きな人の事を知りたいって思うのは普通の事です」
「だからって、いきなりそんな事聞くな!アホ!」
大真面目に恥ずかしい事を言われるのにはまだ慣れない。からかっているわけではないと分かっているから、余計にどう対応していいか戸惑ってしまう。

「大体なんでそんな話題からなんだ?!聞くんだったら、好きな食べ物とか、もっと普通の話題があるだろうが!」
「……ヒロさん。俺、ヒロさんに出会うのが遅すぎたと思うんです」
また脈絡なく会話が飛んだ。野分と話しているとよくある事で、考えている事が分からなくなる原因でもある。どうやったら知りたい事の話から、会うのが遅すぎた云々という話に繋がるんだ。基本的に何事も理路整然と考えたがる傾向がある俺には、理解し難い。
「だって、もうヒロさんは俺に会う前に、他の人とキスもデートもセックスだってしちゃってるじゃないですか」
こいつは何を言い出すんだ…。ストレート過ぎる言葉を止めようと思ったが、生憎手元の本は投げたばかりだった。睨みつける事で抗議するが、動じた様子はない。俺がキスについての質問に答えていたら、その他についても答えさせられていたのかと思うと恐ろしい。

「ヒロさんの初めてになれないなら、せめてヒロさんについてもっと知りたいんです」

ああ、そういう事か。
ガキ特有の独占欲。
相手にとって、常に自分が一番でありたいという願望。
本来なら鬱陶しい事この上ないはずなのに、野分から向けられるこの感情は心地良い。

野分は分かってない。
野分に出会う前に経験したキスも、他の誰かと体を重ねた事も、こいつが、『俺に想われて下さい』と言って抱きしめた瞬間に、どこかに吹っ飛んで行ってしまった。
年月などは関係ない。その想いが嬉しかった。

俺の全てを受け止めて、俺を想ってくれたのは、お前が初めてなんだよ、アホが。

恥ずかしくて、『お前が好きになってくれたのが嬉しい』などとは死んでも言えないので言葉を選ぶ。
「あのさ、そういう即物的な事じゃなくてさ…。お前と一緒にいる時間は悪くないっつーか…」
変に自信をなくしている野分を元気づけようとして、結局恥ずかしい台詞を言ってしまっているような気がする。
今の俺にとっての一番は野分だという事を察しろ、ボケ!と、素直に気持ちを伝えられない自分の事を棚に上げて、心の中で罵る。

「俺が言うのもなんだが…、今までがどうこうより、今一緒にいるのはお前なわけだし…」
過去の時間は埋められないのだから、これからの時間を一緒に埋めて行けばいい。
野分にそれが伝わっただろうかと表情を伺うが、いまいち分からない。

「ヒロさんは…ずっと俺の側にいてくれるって事ですよね?」
「まあ…そういう事になる…かな」
「……わかりました。これから、回数で上回ればいいんですね!」
少し考え込んでいた野分が発した言葉から、俺の言いたい事を理解してくれたかと思ったが甘かった。
「全然違う!わかってねえ!お前、俺の話聞いてたか!?」
“即物的なものではない”と言ったのをすっかり無視している。

「じゃあ、質ですか?時間が取り戻せないなら、その分濃密にすればいいんですよね。俺、頑張りますっ」
何を頑張るんだ、何を…。しかも濃密って…。
突拍子もない事を言い出す野分に頭が痛くなって来る。
「考え方は間違ってないが、手段が間違ってるんだよ!」

年下の恋人には、教え込まなければいけない事が多い。
年上の威厳やら、人の話を聞いてきちんと筋立てて話す事。
そして、俺がお前を好きだという事も。

じっくり時間を掛けて分からせてやるから、覚悟しろよ?


Fin.

--
今の、ヒロさんが言葉にしなくてもあぶりだしを察知できる野分、という関係も好きですが、付き合い始めた当初の、お互いどう思われているかいまいち自信がない状態のもどかしさも好きだったりします。
お題は『綺羅星-Kiraboshi-』様から頂きました。

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野分…面白い…
何だろう、私なら速攻往復ピンタしてやってたそうな野分の質問に
ちゃんと言葉で説明してあげる弘樹から愛を感じます。
ストレートすぎるっていうかアホ以外の何でもない野分とその野分が好きな弘樹。
(よくよく考えると野分なんて無礼な質問をするんだって思わなくもないです・笑)
やっぱりこの二人すごく可愛いです。
瑠沙: 2008.09/13(Sat) 14:48 Edit
のわきぃ〜w
て、天然ですね!
ヒロさんの じっくり時間を掛けて分からせてやるから、覚悟しろよ?がいいです!
あぶり出しが読めるようになるまでの
最初の一歩でしょうか?
もう この2人が愛し過ぎます!w
かりん: 2008.09/14(Sun) 01:53 Edit
>瑠沙さん
往復ビンタに大笑いしました!野分だから許してやってください~。
失礼な事も恥ずかしい事もストレートに!悪びれもなく!がモットーです(笑)!
ん?私の野分像間違ってる…?
ヒロさんは野分があんな事を言っても好きなんだからしょうがないですよね!

今日お話できて嬉しかったのですが、私いつも瑠沙さんに「瑠沙さんの野分に萌えたんです!!」と言って特攻してるような気がします…。いつも突然萌えをぶつけてすみませーん(笑)。
mai: 2008.09/14(Sun) 22:31 Edit
>かりんさん
思った事はストレートに言う癖に、肝心な事は言わないで言葉足らず…ってある意味厄介ですね(笑)。
ヒロさんのプライドに掛けて「分からせてやる」と思っているのでしょうが、数年後にはあぶりだしで本心丸見えなのは分からせ過ぎだと思います。ヒロさんが分かりやすいのか野分の学習能力が高いのか…。多分どっちもなんでしょうねw

この前の絵チャでは一分間位しかご一緒できませんでしたね(;;)。また時間合う時に構ってやって下さいv
mai: 2008.09/14(Sun) 22:32 Edit
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