GF e-side
純情エゴイストへの愛を散らかし中。
2009'01.09.Fri
昼過ぎから降り出した雪は帰宅する頃にはすっかり積もっていて、電車が止まっていないのが奇跡のようだった。
「ただいまです」
「おかえり。よく帰って来られたな」
玄関の扉を開けると先に帰っていたらしいヒロさんが顔を覗かせて声を掛けてくれた。外は寒くて体の芯まで凍りそうだったけど、ヒロさんの顔を見ただけで心はほっと暖かくなる。
「病院を出る時間がもう少し遅くなってたら危なかったかもしれません」
「ああ、ちょっと待て」
靴を脱いで部屋に上がろうとした俺を制したヒロさんは少し姿を消して、タオルを手にして戻って来た。
「雪。まだついてる」
肩や頭についてしまった雪はマンションの入口で払ったつもりだったけどまだ残っていたらしい。漠然と、タオルを渡されるのかなと思っていたら、驚いた事にヒロさんはタオルで肩の雪を払ってくれた。
「ほら、頭にもついてる。屈め。てめーは無駄にデカいんだから届かねーんだよ」
言われるままに頭を下げるとタオルでくしゃくしゃと拭いてくれる。その事があまりに自然で、子供みたいに扱われるのが少し恥ずかしいけどすごく嬉しくて、頭を上げると思わず顔がほころんでしまう。
「…何笑ってんだよ」
「いえ、何でもないです」
新婚さんってこんな感じなのかなと思ってました、なんて言ったら間違いなくタオルを投げつけられて終わりだろうから言わないでおく。
「風呂沸いてるからさっさと入れ」
ヒロさんはくるりと背中を向けてリビングに戻ってしまう。
「ヒロさんは?」
「俺はさっき入った」
「一緒にもう一回入りませんか?」
「入らん!!」
あ、やっぱりタオルが飛んで来た。残念。
風呂から上がると、ヒロさんはカーテンを開けた窓辺でまだまだ降り続く雪を眺めていた。
「そんなところにいると湯冷めしますよ」
「このままだと明日には随分積もってるんだろうな。お前も休みで良かったよな」
相変わらずヒロさんの雪好きは健在のようで、心なしか声も弾んでいるのが可愛い。
「また雪だるまでも作りますか?」
「…いや、やめとく」
以前一緒に作った事を思い出して提案してみたけど、ヒロさんはその後の事も一緒に思い出したのか、却下されてしまう。
「それよりさ、雪が降ると町が妙に静かになるだろ?あの感覚が結構好きなんだよなー」
はしゃぎながら、きっともう静かだよな、などと言って窓を開けて確かめようとするヒロさんを慌てて止める。こんな寒い日に窓を開けたりしたら本当に風邪を引いてしまう。
ついでにカーテンも閉めて、ヒロさんの背中を抱きすくめる。
案の定、ずっと窓辺にいたらしいヒロさんの体は冷え始めていた。
「何すんだよ」
「雪ばっかり見ていないで、俺の事も見て欲しいです」
「アホか。邪魔すんな」
「嫌です。邪魔します」
明日は俺もヒロさんも休みだから、久しぶりにヒロさんとゆっくり過ごせる夜を大切にしたい。
暖かい部屋の中で、一緒に本を読んだり、触れ合ったり、キスをしたり。
やりたい事はいっぱいある。
抱きしめながらそう告げると軽く溜め息をつかれてしまったけど、頭を軽く俺の胸に預けてくれる。
「この雪ならどうせ明日も一日中家から出られないんだ。時間ならたっぷりあるだろ」
「そうですね」
俺の手に重ねられたヒロさんの手はほんのり暖かくなっている。
しんしんと雪の降る静かで長い夜は、まだ始まったばかり。
Fin
--
前々から雪の日の話を書きたいなーと思っていて、やっと書き上げた当日に本当に初雪が降りました。びっくり。
お題は『綺羅星-Kiraboshi-』様から頂きました。
「おかえり。よく帰って来られたな」
玄関の扉を開けると先に帰っていたらしいヒロさんが顔を覗かせて声を掛けてくれた。外は寒くて体の芯まで凍りそうだったけど、ヒロさんの顔を見ただけで心はほっと暖かくなる。
「病院を出る時間がもう少し遅くなってたら危なかったかもしれません」
「ああ、ちょっと待て」
靴を脱いで部屋に上がろうとした俺を制したヒロさんは少し姿を消して、タオルを手にして戻って来た。
「雪。まだついてる」
肩や頭についてしまった雪はマンションの入口で払ったつもりだったけどまだ残っていたらしい。漠然と、タオルを渡されるのかなと思っていたら、驚いた事にヒロさんはタオルで肩の雪を払ってくれた。
「ほら、頭にもついてる。屈め。てめーは無駄にデカいんだから届かねーんだよ」
言われるままに頭を下げるとタオルでくしゃくしゃと拭いてくれる。その事があまりに自然で、子供みたいに扱われるのが少し恥ずかしいけどすごく嬉しくて、頭を上げると思わず顔がほころんでしまう。
「…何笑ってんだよ」
「いえ、何でもないです」
新婚さんってこんな感じなのかなと思ってました、なんて言ったら間違いなくタオルを投げつけられて終わりだろうから言わないでおく。
「風呂沸いてるからさっさと入れ」
ヒロさんはくるりと背中を向けてリビングに戻ってしまう。
「ヒロさんは?」
「俺はさっき入った」
「一緒にもう一回入りませんか?」
「入らん!!」
あ、やっぱりタオルが飛んで来た。残念。
風呂から上がると、ヒロさんはカーテンを開けた窓辺でまだまだ降り続く雪を眺めていた。
「そんなところにいると湯冷めしますよ」
「このままだと明日には随分積もってるんだろうな。お前も休みで良かったよな」
相変わらずヒロさんの雪好きは健在のようで、心なしか声も弾んでいるのが可愛い。
「また雪だるまでも作りますか?」
「…いや、やめとく」
以前一緒に作った事を思い出して提案してみたけど、ヒロさんはその後の事も一緒に思い出したのか、却下されてしまう。
「それよりさ、雪が降ると町が妙に静かになるだろ?あの感覚が結構好きなんだよなー」
はしゃぎながら、きっともう静かだよな、などと言って窓を開けて確かめようとするヒロさんを慌てて止める。こんな寒い日に窓を開けたりしたら本当に風邪を引いてしまう。
ついでにカーテンも閉めて、ヒロさんの背中を抱きすくめる。
案の定、ずっと窓辺にいたらしいヒロさんの体は冷え始めていた。
「何すんだよ」
「雪ばっかり見ていないで、俺の事も見て欲しいです」
「アホか。邪魔すんな」
「嫌です。邪魔します」
明日は俺もヒロさんも休みだから、久しぶりにヒロさんとゆっくり過ごせる夜を大切にしたい。
暖かい部屋の中で、一緒に本を読んだり、触れ合ったり、キスをしたり。
やりたい事はいっぱいある。
抱きしめながらそう告げると軽く溜め息をつかれてしまったけど、頭を軽く俺の胸に預けてくれる。
「この雪ならどうせ明日も一日中家から出られないんだ。時間ならたっぷりあるだろ」
「そうですね」
俺の手に重ねられたヒロさんの手はほんのり暖かくなっている。
しんしんと雪の降る静かで長い夜は、まだ始まったばかり。
Fin
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前々から雪の日の話を書きたいなーと思っていて、やっと書き上げた当日に本当に初雪が降りました。びっくり。
お題は『綺羅星-Kiraboshi-』様から頂きました。
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