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純情エゴイストへの愛を散らかし中。

2024'11.23.Sat
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2009'01.01.Thu
すごくいい夢を見た。
……気がする。

とても暖かくて、幸せな気持ちでいっぱいになって、いつまでもこうしていたいと思っていた。目が覚めた時もその余韻が残っていたのに、はっきりと頭が覚醒して行くにつれて逆に夢の内容はぼんやりと霞がかって、最後には消えてしまった。
しばらくの間、夢の内容を思い出そうと頑張ったけど、やっぱり思い出せないままだった。
折角の良い夢だから思い出せないのは悔しいような気がするけど、新年早々初夢として見た夢が幸せな夢だった事を喜んだ方がいいのかもしれない。

正月といっても俺の職業にはあまり関係ないわけで、三が日の今日もシフトが入っている。隣に眠る愛しい人を起こさないように出勤する支度をして、出掛けにやっぱり顔が見たくなって部屋に戻った。

ヒロさんは相変わらず可愛い寝顔を無防備に晒している。
色素の薄い柔らかい髪を撫で、頬に軽くキスをするとゆっくりと瞼が開いた。
「のわ…き…?」
半分眠りながらも俺の名前を紡いでくれるその唇が愛しくて、頬だけで我慢しようと思っていた気持ちも吹っ飛んでしまう。ヒロさんの唇に深く唇を重ね、しばらく柔らかい感触を楽しませてもらって唇を離すと、少し潤んだ瞳で睨み付けられた。
「……人の寝起きに何しやがる」
「すみません。俺、仕事なんで行って来ます。明日の朝には戻れると思います」
「答えになってないだろ…。まあいい。気を付けて行ってこい」
「はい。でも、ちゃんと答えになってますよ。行ってきますのキスです」
もう一度軽く額にキスをすると、真っ赤になったヒロさんは布団を被って隠れてしまった。
「アホな事言ってないでさっさと行け!」
くぐもった声で怒鳴るそんなところも可愛くて、いつまでもヒロさんと一緒にいたいけれどそういう訳にもいかないので、後ろ髪引かれる思いで部屋を後にした。

正月特有の忙しさに忙殺され、仕事を終えて病院を出る頃にはすっかり日が高く昇っていた。いつもと少し雰囲気の違う町。着物を着ている人が何人も歩いているから華やかなのに、独特の静けさがある。
腕時計で時間を確かめると10時を回ったところだった。もうヒロさんも起きているだろう。たった1日しか離れていなかったのに、なんだか無性にヒロさんの声が聞きたくて仕方がない。家に帰るのを待ちきれずに携帯電話を鳴らす。
『もしもし』
「おはようございます。ヒロさん」
『仕事終わったのか?』
「はい。今帰りです。あの…ヒロさん、今日時間ありますか?」
『別に何の予定もないけど』
「それでしたら、初詣行きませんか?」
駅の反対側に大きめな神社があって、おそらくそこに向かっているであろうと思われる人達も多い。そんな人達と並んで歩いてるうちに、ヒロさんと一緒に初詣に行けたら…と思ったので誘ってみる。
『初詣?…分かった。じゃあ支度して行くからちょっと待ってろ』
すぐにOKの返事がもらえたのが嬉しい。
「はい!駅の改札で待ってます」

急がなくていいのは分かっているのだけど、小走りで駅に向かい、改札口でヒロさんを待つ。思っていたより早くヒロさんの姿が改札に現れた事が嬉しくて思わず名前を呼んで手を振ると、それに気付いたヒロさんはわざと俺の目の前を素通りしてしまった。赤くなっているのは寒さのせいだけではなくて、多分照れているからだろう。どんどん前に進んでしまうヒロさんを慌てて追い掛ける。
「あんな大声で名前呼ぶな!そんな事しなくてもお前は目立つんだから見つけられる」
「はい。すみません。それにしても随分混んでますね」
駅を挟んで病院と逆側にある神社に行くのは初めてなのだけど、正月とはいえかなりの混みようだ。
「まあ、ここら辺では一番大きい神社だからな」
「はぐれないように気をつけて下さいね」
「ガキ扱いすんなっ!」
子供扱いしているわけではないのだけど、ヒロさんはしっかりしているように見えて危なっかしいところがあるから心配だ。

賑やかな参道を人にもみくちゃにされながら進み、お参りをする。隣で手を合わせるヒロさんは真剣な表情だった。何をお願いしたのかは聞かなかったけど、ヒロさんの事だからきっと真剣に考えて願い事をしたに違いない。

「あ、ヒロさん。あれやりたいです」
初詣と言えばお決まりのおみくじ。と言っても、実は今まであまりやった事がない。折角ヒロさんと一緒に初詣に来られたのだから、何かお参り以外にも初詣らしい事をしたくてお願いすると、ヒロさんはしょうがないな、といった感じで付き合ってくれた。
二人で順番に引いて、おみくじの中身を確かめる。俺の結果は『小吉』。病気・失せ物・待ち人・恋愛などの項目にも当たり障りのない事ばかりが書かれていて、正直面白みのない結果だったけどおみくじに面白いもつまらないもないので文句を言うわけにもいかない。自分がそんな結果だったので、ヒロさんの方はどうだったか聞こうとすると、開いたおみくじを持ったまま固まっているヒロさんの姿が目に入った。
「ヒロさん?どうかしましたか?」
「え!?いや、何でもないぞ!」
何でもないと言いながら視線は泳ぎ、明らかに挙動不審だ。こんな時のヒロさんは必ず何か隠し事をしている。というか、どう考えても原因は手に持っているおみくじのはずだ。
「もしかしてヒロさん、おみくじの結果があまり良くないんですか…?」
窺うように顔を覗き込むと、無言で紙を差し出される。内容を確かめると、最初に目に入ったのは『凶』の文字。続けて読んで行くと、“失せ物出がたし”“待ち人来らず”“恋愛難あり”などなど案の定ろくな事が書かれていない。
「まあ、こんな物はただの迷信だからな!おみくじの結果に一喜一憂するなんて馬鹿げているぞ。ハハハ…」
口では気にしないと言っておきながら、どう見てもショックを受けているヒロさんを見ると心が痛む。俺がおみくじを引きたいなんて言ったから…。
「これ、枝に括り付けて帰りましょう」
凶が出たら、悪い運気を神社にとどめる為に木の枝に結びつけると聞いた事があるのを思い出して、ヒロさんが引いたおみくじは枝に結び付けておく。それでもヒロさんは心ここにあらずといった感じで、出口に向かう途中も逆から歩いて来る人に何度もぶつかりそうになっている。そのくせ歩く速度を緩めないので、ヒロさんの姿が人ごみの中に紛れて見失ってしまいそうだ。思わずヒロさんの手を掴み、掌に俺の手を滑り込ませて指を絡めるとやっと振り向いてくれた。
「何やってんだアホ!こんな人がいる所で…」
「大丈夫ですよ。これだけ人がいたら誰も他人の手元なんか見てません」
実際、これだけ密集していると前に進むのも一苦労で、周りの人の事を気にしている余裕なんかない。そう説明するとヒロさんも納得してくれたのか、顔を真っ赤にしながらも、神社の出口に着くまでという条件付きで手を繋いだままにしてくれた。

そして、ヒロさんと手を繋いだ時に、今まで忘れていたある事を突然鮮明に思い出した。
「ヒロさん、良い事を思い出しました」
「いきなり何だよ」
「俺、初夢でヒロさんとこうやって手を繋いで歩く夢を見たんです」
昨日起きた時、すごく幸せな気持ちだったのはそのせいだったんだ。起きたと同時に夢の事は頭の中からすっかり抜け落ちてしまったと思ったけど、ヒロさんと手を繋いだ事ではっきりと思い出す。
「手を繋ぐ夢って、その人ともっと親密になりたいって願ってるのを現しているらしいです。俺はいつだってヒロさんを好きだし、ヒロさんにも好きでいてもらいたいと思ってますけど、初夢で見られたって事は、その気持ちに嘘がないと証明されたみたいじゃないですか」
これだけは自信を持って言える。ヒロさんを好きな気持ちが揺らぐ事なんてない。
「だから、おみくじにあった“恋愛難あり”なんて事は絶対ないです」
「…お前…俺のおみくじの結果の事…」
俺を見上げたヒロさんは少し驚いたような顔をしている。あんなにショックを受けていたヒロさんを放っておくなんて出来るはずがないのに。
「失くし物をしたら探すの手伝いますし、待ってる人が来なかったら俺も一緒に待ちます。ヒロさんの側にはいつも俺がいるから大丈夫です」
「…恥ずかしい事言ってんじゃねーよ」
ヒロさんは顔を背けてしまったけど、その横顔には俺にしか分からないようなかすかな笑みが浮かんでいて、繋いだ手を握り返してくれる。

おみくじに書かれていた悪い運勢なんて気にしなくていいように俺がヒロさんを守りたい。
そして、いつまでも夢で見たように手を繋いで歩いて行きたいと強く願った。


Fin

--
あけましておめでとうございます。定番の初詣も初夢もやりたい!という事でどちらも押し込んでしまいました。おみくじの話のヒントをくれた友人に感謝。
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