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GF e-side

純情エゴイストへの愛を散らかし中。

2024'11.23.Sat
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2008'12.08.Mon
ペタペタ、ペタペタ…と野分が俺を触っている。
と言っても別にいやらしい事を仕掛けてきているわけではなく、単純に、本を読んでいる俺に触る事を楽しんでいるらしい。俺の側に座って飽きもせずに、髪の毛を梳いたり、頬に触れたり、本を持っていない方の手に自分の指を絡めたり。

触るのを許したのは確かに俺だ。しかし、“本を読むのを邪魔しない程度に”と条件を出したはずだ。今の時点でもうとっくに邪魔になっている。
……そろそろ怒ってもいいだろうか。

「野分」
「はいっ」
うっ…。
これから『ウザい』とはねのけようとしているのに、どうしてそんな満面の笑みで応えるんだ。声を掛けられたのがそんなに嬉しいのか?思わず毒気を抜かれてしまいそうになる。いやいや、ここで負けてはいけない。意を決して叱ろうとした時、ある事に気付いた。

「……お前の手、本当にあったかいよな」
重ね合った手のひらから伝わる熱さにポツリと漏らす。
「そうですか?平熱が高いからかな。ヒロさん以外にそんな事言われた事ないからよく分からないです」
………当たり前だ。俺以外に対してこんな風にベタベタ触っていたら問題だ。
まあ、野分の職業柄、患者の子供達に触れるのは仕方ないが…。

というか、“仕方ない”ってなんだ!“本当は野分が子供達に触るのも嫌”という事か!?
待て待て待て。落ち着け、俺。それではまるで子供に対して嫉妬しているみたいではないか。子供は患者で、野分の仕事に関係あって、嫉妬の対象として考える事自体が間違っている。そもそも、なんで俺が嫉妬だなんて大人げない事をしなければならないんだ!

野分の手は俺だけに触れていればいいと思ってしまうのは、子供じみた独占欲なんだろうか。

「ハハっ…平熱が高くて手が熱いとかガキみてーだな」
「…」
しまった。繋いだ手の熱さが恥ずかしくて、つい憎まれ口を叩いてしまったが、“ガキ”は禁句だったか?野分を傷付けたかと心配になり、表情を伺うが、傷付いた様子ではなく楽しげに見えるのは気のせいか…?

「ヒロさんに触れるなら、俺、子供でもいいです」
「はあ!?ガキは触っていいなんて許可出した覚えはねーぞ!」
「ダメですよ。たとえ子供だって、俺以外の人にヒロさんを触らせないで下さい」
手を引っ張られて体を引き寄せられる。
こいつは…。人が思っていても言えないような事を恥ずかしげもなくあっさり言いやがって…。だからガキだっていうんだ。

「……触らせねーよ」
俺が触れて欲しいと願うのは、野分の熱い手だけだ。

肩口に顔を埋めて呟くと、片手で優しく抱き寄せられる。
繋いだ手はまだ熱いまま。自然と俺の顔まで熱くなってきてしまう。
もう今夜はこれ以上読み進められなそうだと悟り、読みかけの本を閉じた。


Fin.


--
「俺だけに触ってればいいんだよ!」的な意味で"only me"。
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