GF e-side
純情エゴイストへの愛を散らかし中。
2008'07.10.Thu
野分と、喧嘩をした。
喧嘩の原因は些細な事で、普段だったらこんなにこじれる事はなかったのに、今回はお互い意固地になってしまい、口をきかないまま一週間も経ってしまった。
喧嘩の原因は些細な事で、普段だったらこんなにこじれる事はなかったのに、今回はお互い意固地になってしまい、口をきかないまま一週間も経ってしまった。
仕事の都合上、すれ違いの多い生活で、ゆっくりと話す時間もないまま日にちが過ぎるという事は今までもあった。しかし、顔を合わせているのに話さずに、こんなに経ってしまったのは初めてだ。
正直、家にいても気まずいし、息苦しい。
どちらかが、もしくはお互いに謝ればこの事態に収拾がつくのは分かっているのだが、こうなってしまった以上、自分から謝るのもしゃくだし、何よりきっかけがつかめない。
今日も、家に帰る時間を先延ばしにする為に、わざと残業をして帰った。
野分は起きていて、リビングでテレビを見ていた。俺が帰って来た事に気付かないはずはないのだが、こちらを一瞥もしない事にムッとする。まあ、俺が先に帰っていた時も野分に対して同じ態度を取っているのだから、お互い様なのだが。
(そもそも、原因は何だったっけ…)
部屋に鞄を置き、着替えながら考える。
こうも時間が経ってしまうと、何に対して怒っていたか忘れてしまい、ただの意地の張り合いになっている気がする。
(確か…俺が秋彦と飲んで酔っ払って…)
そうだ。久しぶりに秋彦と飲んでいたら、酒に呑まれてしまったのだった。前はこんなに酒に弱くなかったはずなのだが、最近そんな事が多い。
それで野分が迎えに来て、家に帰るなり、秋彦の前でそんなに酔うな、という感じの事を言われた。それに対して俺は何を思ったのか、
「誰と飲もうが俺の勝手だ。交友関係に口を出すな」
などと見当違いな返答をして、野分を怒らせたんだった…。
冷静に考えれば、別に野分は俺が秋彦と飲んでいた事を怒っていたわけではない。
秋彦の前で、自分をなくす程に酔っ払った事に対して怒っていたのだ。俺だって、野分が他のヤツの前で酔い潰れる程に飲んでいたら…と思うといい気はしない。
(……やっぱり、俺が悪いって事になるのか…?)
いつも俺にべったりな、あの野分が口も聞いてくれないなんて、余程怒っているのだ。今更ながら、事の重大性に気付いて青ざめる。
(ど…どうしよう……)
気を落ち着かせる為に、取りあえずコーヒーでも飲む事にする。うんと濃いめのブラックにしよう。
キッチンでコーヒーを準備する間も、こちらに背を向けて座っている野分が気になってしまう。
(何て言って謝ればいいんだ?そもそも、今更謝って許してくれるのか?)
思考が出口のない迷路に入り込んでしまい、頭の中がグルグルする。
しばらくして、コーヒーのいい香が漂って来た。マグカップに注ぎ、思い立ってもう一つカップを取り出す。二つ目のカップには、砂糖を一つと、ミルクをたっぷり。
ブラックコーヒーの方を一口飲み、深呼吸をしてから、ミルク入りコーヒーのカップを持って野分の方に近付いた。
俺の気配に気付いてこちらに顔を向けた野分に、無言でカップを差し出す。決して、口をききたくないからとかではなく、単純に、何と声を掛ければいいか分からないからだ。
どんな顔で俺を見ているのか知るのも怖くて、野分の顔も直視できない。
時が止まったかのように感じた後(実際には秒単位だろうが)、野分はカップを受け取って呟いた。
「………ヒロさんは、ずるいです」
「は?」
「これじゃあ、俺がワガママな子供みたいじゃないですか」
思わず野分の方を見ると、怒っている風ではなく、どちらかというと、拗ねているような表情だ。
「あー…えーっと…。酔った勢いとはいえ、酷い事言って…悪かった」
「いえ…。俺も大人気なかったです」
「いや…お前の気持ちをちゃんと考えなかった、俺が悪い。これからは、もう少し…気をつける」
野分が怒っていない事に安心し、いつもよりも素直に言葉を紡げた。
俺の言葉を聞いた野分に、柔らかい笑みが戻る。
野分が笑ってくれた。それだけで、どうしようもなく嬉しくなってしまう。
「ヒロさんは無防備だから、気を付けすぎだと思う位、気を付けて下さい」
「なんだよ、それ…」
野分に手を引かれ、隣に座る。こんなに近くに野分を感じる事が、すごく久し振りのように感じる。
「コーヒー、ありがとうございます。いただきますね」
「おう。冷めないうちに飲んじまえ」
左手は野分と繋いだまま。右手にはマグカップ。
カップの中身をグイッと飲むと、苦いはずのコーヒーが、ほんのり甘く感じられた。
Fin
--
ヒロさんはブラックコーヒーで眠気を紛らわしながら論文とか書いてるイメージです。野分は意外と子供っぽいところがあるので、甘いコーヒー。
実際は、野分が余裕なくなったらヒロさんがちゃんと話聞いてあげるし、ヒロさんが自信なくしちゃったら野分が包み込んでくれるから、こんな風に長引く喧嘩にはならなそうです。
お題は『綺羅星-Kiraboshi-』様から頂きました。
正直、家にいても気まずいし、息苦しい。
どちらかが、もしくはお互いに謝ればこの事態に収拾がつくのは分かっているのだが、こうなってしまった以上、自分から謝るのもしゃくだし、何よりきっかけがつかめない。
今日も、家に帰る時間を先延ばしにする為に、わざと残業をして帰った。
野分は起きていて、リビングでテレビを見ていた。俺が帰って来た事に気付かないはずはないのだが、こちらを一瞥もしない事にムッとする。まあ、俺が先に帰っていた時も野分に対して同じ態度を取っているのだから、お互い様なのだが。
(そもそも、原因は何だったっけ…)
部屋に鞄を置き、着替えながら考える。
こうも時間が経ってしまうと、何に対して怒っていたか忘れてしまい、ただの意地の張り合いになっている気がする。
(確か…俺が秋彦と飲んで酔っ払って…)
そうだ。久しぶりに秋彦と飲んでいたら、酒に呑まれてしまったのだった。前はこんなに酒に弱くなかったはずなのだが、最近そんな事が多い。
それで野分が迎えに来て、家に帰るなり、秋彦の前でそんなに酔うな、という感じの事を言われた。それに対して俺は何を思ったのか、
「誰と飲もうが俺の勝手だ。交友関係に口を出すな」
などと見当違いな返答をして、野分を怒らせたんだった…。
冷静に考えれば、別に野分は俺が秋彦と飲んでいた事を怒っていたわけではない。
秋彦の前で、自分をなくす程に酔っ払った事に対して怒っていたのだ。俺だって、野分が他のヤツの前で酔い潰れる程に飲んでいたら…と思うといい気はしない。
(……やっぱり、俺が悪いって事になるのか…?)
いつも俺にべったりな、あの野分が口も聞いてくれないなんて、余程怒っているのだ。今更ながら、事の重大性に気付いて青ざめる。
(ど…どうしよう……)
気を落ち着かせる為に、取りあえずコーヒーでも飲む事にする。うんと濃いめのブラックにしよう。
キッチンでコーヒーを準備する間も、こちらに背を向けて座っている野分が気になってしまう。
(何て言って謝ればいいんだ?そもそも、今更謝って許してくれるのか?)
思考が出口のない迷路に入り込んでしまい、頭の中がグルグルする。
しばらくして、コーヒーのいい香が漂って来た。マグカップに注ぎ、思い立ってもう一つカップを取り出す。二つ目のカップには、砂糖を一つと、ミルクをたっぷり。
ブラックコーヒーの方を一口飲み、深呼吸をしてから、ミルク入りコーヒーのカップを持って野分の方に近付いた。
俺の気配に気付いてこちらに顔を向けた野分に、無言でカップを差し出す。決して、口をききたくないからとかではなく、単純に、何と声を掛ければいいか分からないからだ。
どんな顔で俺を見ているのか知るのも怖くて、野分の顔も直視できない。
時が止まったかのように感じた後(実際には秒単位だろうが)、野分はカップを受け取って呟いた。
「………ヒロさんは、ずるいです」
「は?」
「これじゃあ、俺がワガママな子供みたいじゃないですか」
思わず野分の方を見ると、怒っている風ではなく、どちらかというと、拗ねているような表情だ。
「あー…えーっと…。酔った勢いとはいえ、酷い事言って…悪かった」
「いえ…。俺も大人気なかったです」
「いや…お前の気持ちをちゃんと考えなかった、俺が悪い。これからは、もう少し…気をつける」
野分が怒っていない事に安心し、いつもよりも素直に言葉を紡げた。
俺の言葉を聞いた野分に、柔らかい笑みが戻る。
野分が笑ってくれた。それだけで、どうしようもなく嬉しくなってしまう。
「ヒロさんは無防備だから、気を付けすぎだと思う位、気を付けて下さい」
「なんだよ、それ…」
野分に手を引かれ、隣に座る。こんなに近くに野分を感じる事が、すごく久し振りのように感じる。
「コーヒー、ありがとうございます。いただきますね」
「おう。冷めないうちに飲んじまえ」
左手は野分と繋いだまま。右手にはマグカップ。
カップの中身をグイッと飲むと、苦いはずのコーヒーが、ほんのり甘く感じられた。
Fin
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ヒロさんはブラックコーヒーで眠気を紛らわしながら論文とか書いてるイメージです。野分は意外と子供っぽいところがあるので、甘いコーヒー。
実際は、野分が余裕なくなったらヒロさんがちゃんと話聞いてあげるし、ヒロさんが自信なくしちゃったら野分が包み込んでくれるから、こんな風に長引く喧嘩にはならなそうです。
お題は『綺羅星-Kiraboshi-』様から頂きました。
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