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純情エゴイストへの愛を散らかし中。

2024'11.23.Sat
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2009'02.27.Fri
まだまだ寒い日は続くけど、前より日が長くなっている事に気付いた。
少し前ならこの時間にはもう真っ暗だったのに、今は空が微かに明るい。
少しずつ春が近付いているんだと思うけど、ヒロさんが油断して風邪を
引いたりしたら大変だ。
今日の夕飯は温かい鍋にでもしようかと考えながら歩いていると、
前方に大好きな人の姿を見つけた。

「ヒロさん!」
驚いたように振り返ったヒロさんの表情は、俺の姿を確認して少し柔らかくなる。
それが嬉しくて小走りで追い付き並んで歩く。
「お前も今帰りか」
「はい。予定より早く上がれたので、夕飯の買い物をして帰ろうと思ってました」
「俺も買い物行こうと思ってたから、入れ違いにならなくて良かったな」
「そうですね。何か食べたいものありますか?」
「うーん……。鍋、かな。なんか体が温まるようなもんが食いたい」
 
ヒロさんの言葉に、俺は余程嬉しそうな顔をしていたんだろう。
「なんだ?お前そんなに鍋が良かったのか?」
怪訝な顔をするヒロさん。
 「いえ…いや、食べたいです。鍋にしましょう」
嬉しかったのは、ヒロさんが俺と同じように考えていたという事。
偶然だろうけど、こんな小さな事に幸せを感じてしまう。
夫婦は似てくるっていうからなあ、と心の中だけで呟いた。
 
買い物を済ませて店を出るとさっきよりも暗くなっていた。
急いで帰らないと冷え込みが厳しくなってしまう。家路を急ぐ人達に混じって歩いていると、小さな公園の前でヒロさんが突然歩みを止めた。
「ほら、野分。見てみろ」
ヒロさんが指差したのは、公園の遥か遠く、ビルとビルの合間に見える空。まだ沈みきっていない太陽のせいで、暗闇と夕焼けの朱が混じり合って不思議な色を作り出している。
 
『綺麗』と一言では言い表せない何かを漂わせる空を見つめながら、ヒロさんは何を想っているんだろう。なんとなく声をかけられなくて隣で一緒に空が刻々と色を変て行く様子を観察していた。
一度落ち始めた日が完全に姿を消すのは、思っていたより早かった。
空から朱が消えるのを見届けて、ヒロさんは再び歩き出す。
 「悪い。なんか目が離せなかった」
 「いえ」

夕陽が沈む瞬間を、ヒロさんと一緒に見られた。
共に過ごす時間が決して多いとはいえない俺達だけど、少しの時間でも一緒の景色を見て、一緒に何かを感じる事はできる。
 
こんな風に一瞬を重ねて行って、いつかは二人の時間が永遠になればいいと願った。


Fin.

--
仕事帰りに見た、夜になりかけの空と夕焼けとの混じり具合が綺麗だったので。なんとも抽象的な話になりました。
お題は『
綺羅星-Kiraboshi-』様から頂きました。
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