GF e-side
純情エゴイストへの愛を散らかし中。
2008'11.20.Thu
目が覚めた時に、隣にちゃんと野分が寝ている事を確認するとほっとする。
こんな風に思うようになったのは野分が留学から帰って来てからだ。
こんな風に思うようになったのは野分が留学から帰って来てからだ。
一緒に暮らすようになって数ヶ月。大学とバイトと国家試験の為の受験勉強で野分は相変わらず忙しそうにしているが、毎日きちんと家に帰って来る。それは当たり前の事のはずなのに、一年間、いつ帰るともしれない(そもそも帰って来るかもわからない)野分を待ち続ける生活を送った身としては、そんな事にすら幸せを感じてしまう。
野分は、もう黙って俺の前からいなくなったりしないのだ。
その夜も目が覚めてしまった。喉の渇きを覚え、水を飲みに行こうと思ったが、野分の腕が俺を抱きしめるように体の上に乗っている。
(重いんだよ…!)
起こさないように、何とか野分の腕の下から抜け出す。なるべく動かさないように変に気を使ったから、布団から抜け出すだけで妙に疲れてしまった。
ベッドの縁に腰掛け、暗闇に慣れてきた目で少しの間野分を見つめる。一年の留学の間に少し背が伸びて、体つきも逞しくなったような気がする。
それなのに、隣にいた俺がいなくなり、無意識で少し丸まるようにして寝ている姿は幼く見えるのが面白い。いつも野分が俺にするように片手で頭をくしゃりと撫でると野分の口元が少し綻んだ。人の気も知らないで…。
お前がいない一年、俺がどんな思いでいたか知らねーだろ、アホ。
そして今、こうやって手に届く場所に野分がいる事がどれだけ嬉しいかという事も。
呑気な寝顔になんとなくムカついて、髪の毛をわしゃわしゃと少し乱暴に掻き回した後、部屋を出た。
キッチンで水を飲んで部屋に戻ると野分がベッドの上で上半身を起こしていた。
さっき俺が乱暴に頭を撫でたせいで起きてしまったのなら少し罪悪感を感じる。
「どうした?まだ夜中だぞ」
寝直そうと布団に潜り込んだ俺を、野分がじっと見つめている。
(なんだ?寝ぼけてんのか?)
かと思うと、手を伸ばして来て俺の頬に触れる。いつもと触れ方が違うように感じるのは気のせいではないだろう。俺の存在を確かめるかのように恐る恐る触り、次第にしっかりと、しかし優しく頬を包み込まれる。
「何」
「良かった…。夢じゃないんですね」
「はあ?」
「留学中、よく夢を見たんです。こうやって、ヒロさんと一緒に寝ていて、夢を見ている間はすごく幸せなんですけど、目が覚めると当然ヒロさんはいなくて…。さっきも目が覚めたらヒロさんがいなかったから、また夢を見ていたんじゃないかと思ってしまったんです」
俺だって、野分がいない間に野分の夢を何度も見た。
でもそれは去って行く野分の背中を追う夢だったり、見つからない野分を延々と探しまくる夢だったりで、幸せな夢とは程遠かった。そのせいで寝覚めが悪い朝もしょっちゅうだったのだ。人が悪夢にうなされていたというのに、こいつは夢の中の俺とイチャイチャしてやがったのか!?
「…人を勝手に夢に出すんじゃねえよ」
「夢より、本物のヒロさんの方がいいです」
目の前にいて触れられる方がいいに決まっていると思うのは俺も同じだ。
頬を包む野分の大きな手に自分の手を重ねると、慈しむようにキスをされる。
一年は長かった。
それでも、会いたいと思う気持ちを抑える事はできなかった。
あいつも同じように思っていたのは、あの出されなかった大量の手紙を見ればわかりきった事なのに、“俺ばかりが会いたいと思っていた”と拗ねていたのかと思うと恥ずかしい。
野分、ずっと俺の側にいろ。
俺を手放すな、と願いながら重ねた手に力を込めた。
Fin.
--
お題は『綺羅星-Kiraboshi-』様から頂きました。
野分は、もう黙って俺の前からいなくなったりしないのだ。
その夜も目が覚めてしまった。喉の渇きを覚え、水を飲みに行こうと思ったが、野分の腕が俺を抱きしめるように体の上に乗っている。
(重いんだよ…!)
起こさないように、何とか野分の腕の下から抜け出す。なるべく動かさないように変に気を使ったから、布団から抜け出すだけで妙に疲れてしまった。
ベッドの縁に腰掛け、暗闇に慣れてきた目で少しの間野分を見つめる。一年の留学の間に少し背が伸びて、体つきも逞しくなったような気がする。
それなのに、隣にいた俺がいなくなり、無意識で少し丸まるようにして寝ている姿は幼く見えるのが面白い。いつも野分が俺にするように片手で頭をくしゃりと撫でると野分の口元が少し綻んだ。人の気も知らないで…。
お前がいない一年、俺がどんな思いでいたか知らねーだろ、アホ。
そして今、こうやって手に届く場所に野分がいる事がどれだけ嬉しいかという事も。
呑気な寝顔になんとなくムカついて、髪の毛をわしゃわしゃと少し乱暴に掻き回した後、部屋を出た。
キッチンで水を飲んで部屋に戻ると野分がベッドの上で上半身を起こしていた。
さっき俺が乱暴に頭を撫でたせいで起きてしまったのなら少し罪悪感を感じる。
「どうした?まだ夜中だぞ」
寝直そうと布団に潜り込んだ俺を、野分がじっと見つめている。
(なんだ?寝ぼけてんのか?)
かと思うと、手を伸ばして来て俺の頬に触れる。いつもと触れ方が違うように感じるのは気のせいではないだろう。俺の存在を確かめるかのように恐る恐る触り、次第にしっかりと、しかし優しく頬を包み込まれる。
「何」
「良かった…。夢じゃないんですね」
「はあ?」
「留学中、よく夢を見たんです。こうやって、ヒロさんと一緒に寝ていて、夢を見ている間はすごく幸せなんですけど、目が覚めると当然ヒロさんはいなくて…。さっきも目が覚めたらヒロさんがいなかったから、また夢を見ていたんじゃないかと思ってしまったんです」
俺だって、野分がいない間に野分の夢を何度も見た。
でもそれは去って行く野分の背中を追う夢だったり、見つからない野分を延々と探しまくる夢だったりで、幸せな夢とは程遠かった。そのせいで寝覚めが悪い朝もしょっちゅうだったのだ。人が悪夢にうなされていたというのに、こいつは夢の中の俺とイチャイチャしてやがったのか!?
「…人を勝手に夢に出すんじゃねえよ」
「夢より、本物のヒロさんの方がいいです」
目の前にいて触れられる方がいいに決まっていると思うのは俺も同じだ。
頬を包む野分の大きな手に自分の手を重ねると、慈しむようにキスをされる。
一年は長かった。
それでも、会いたいと思う気持ちを抑える事はできなかった。
あいつも同じように思っていたのは、あの出されなかった大量の手紙を見ればわかりきった事なのに、“俺ばかりが会いたいと思っていた”と拗ねていたのかと思うと恥ずかしい。
野分、ずっと俺の側にいろ。
俺を手放すな、と願いながら重ねた手に力を込めた。
Fin.
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お題は『綺羅星-Kiraboshi-』様から頂きました。
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