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GF e-side

純情エゴイストへの愛を散らかし中。

2024'05.20.Mon
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2009'02.07.Sat
先日えみるさん宅の絵チャで「ヒロさんと野分がペットを飼ったらお互い嫉妬しそう」みたいな話をして、そんな話を書けばいいよ!と言われたので自重しないで本当に書いちゃいましたよ、という話。なので原案はその場にいた全員って事でv

◇       ◇       ◇


『弘樹と猫』


「にゃあ」
いつものようにリビングで読書に没頭していたら、聞き慣れない声に集中が途切れた。声がした方へ視線をずらすと、小さな生き物が丸い目でジーッとこちらを見つめていた。

猫だ。

一瞬、何故ここに猫がいるのかと訝しんだが、友人からどうしてもと頼まれて預かった事を思い出す。
猫はこちらに近付くでもなく俺を見つめている。腹でも減ったのだろうか。手の届く距離にいたので戯れに手を伸ばして撫でようとしたが、触れる直前、さっと逃げられてしまった。
そしてそのまま、キッチンに立っていた野分のもとへ駆け寄る。ニャーニャーと甘えた声を出して野分の足に体を擦り寄せる猫。野分もかがんで猫の背を撫で、更に猫は気持ち良さそうに甘える。

(なんだあの態度は!俺に対する態度と随分違うじゃないか!)

あの猫は俺が預かって来たというのに、野分にベッタリだ。人にでも動物にでも好かれ易いヤツめ。野分も満更でもないようで、猫を抱きかかえて嬉しそうにしている。あいつが猫好きだなんて初めて知ったぞ。

野分と猫がベタベタしているのを見ると、なんだか無性にイライラする。

嫉妬しているのか?
猫を手懐けた野分に…?
それとも、野分に甘える猫に…?

………いやいやいや。
猫相手に嫉妬するとか有り得ないだろう!自分の思考を疑う。

しかし、心に浮かんださざ波は消える事はなく、もう、読書は続けられそうになかった。


◇       ◇       ◇


『野分と猫』

ヒロさんが預かって来た猫は、最初俺を見て警戒していた。いきなり知らない家に連れて来られ、知らない人間と対峙したらそんな反応になってしまっても仕方ないだろう。
猫はフンフンと部屋の中の匂いを嗅ぎ回り人心地ついたところで、その猫と一緒に預けられた普段猫が使っているという食器に気付いた。
その前に座って何か言いたげに食器を見ている猫に、猫缶の中身を出してやるとおいしそうにペロリと平らげてしまう。

その後はお腹がいっぱいになって緊張も解けたのか、適度な距離を保ちつつも俺に近付いて来るようになった。そうなるとやはり可愛くて、撫でたりしているうちに随分と懐かれたような気がする。

猫が来て四日目の夜、深夜に帰宅した俺はヒロさんが寝ているベッドに潜り込ませてもらおうとして目を疑う。
掛け布団をめくると、すやすやと眠るヒロさんの横に猫がいた。しかも、ヒロさんに腕枕をされて。
(そこは俺の場所なのに…)
普段の猫の様子を見ていると、あまりヒロさんに寄って行かないようだったので油断していた。

とりあえず猫にはどいてもらおうと静かに猫を持ち上げると、猫の爪がヒロさんのパジャマに引っかかってしまって離れない。無理矢理離したらヒロさんが起きてしまいそうで、強硬手段が取れない。しょうがなく猫を元の位置に戻すと、暖かいのかヒロさんが猫をぎゅうっと抱きしめてしまう。その仕草はとても可愛いのだけど、抱きしめているのは俺じゃなくて猫なわけで…。

猫がいるからと言ってヒロさんと一緒に寝るのを諦めたくない俺は、猫には目を瞑る事にしてベッドに潜り込む。
ヒロさん、猫、俺の順番の奇妙な川の字。猫を押し潰すといけないので、ヒロさんとの間に距離ができてしまうのが寂しい。

布団の中は暖かかったけど、よく眠れない夜を過ごす事になってしまった。


◇       ◇       ◇


『再び、弘樹と猫』

本を読む俺と、その近くに座っている野分。
それはいつもの光景で、何も特別な事はなくて。

野分が甘えるように後ろから俺に抱きつこうとしている気配を感じる。最近忙しくてあまり触れ合っていなかったので、野分の好きなようにさせてやろうと思っていると、今まで寝ていたはずの猫が俺達の方に向かって来ているのに気付いた。そして、猫が野分と俺の間に割り込むように体を滑り込ませようとした時…。

思わず猫の首根っこを掴んでいた。

何の悪びれた様子もない猫と、驚いた顔の野分。
そして、自分で何をしたのかいまいち理解しきれていない俺。

(俺は何で猫をとっ捕まえてるんだ…??)

そのまま止まってしまったかのような時間を再び動かしたのは、野分の笑い声だった。
「…アハハハ!」
「な…何がおかしいんだよ!?」
「だって…アハハ…」
笑いながら野分は俺の手から猫を受け取り、そのまま逃がす。猫はこちらに興味を失ったのか去って行く。

そして野分は、改めて俺を腕の中に閉じ込める。
背中に感じる暖かさがなんだかとても懐かしい。
「大丈夫ですよ、ヒロさん」
「何がだよ」
「猫からガードしなくても、ここはヒロさん専用の席です」
「…なんだそれは」
俺が野分の側を守りたいが為に猫を押しのけたとでも言いたいのか!?
自惚れるのも大概にしやがれ!と怒鳴ってやりたいのに、久し振りに野分に触れている嬉しさが勝ってしまい、口に出す事はできなかった。

せめてもの抵抗で「笑うなアホ」と呟くと、野分が小さく笑う声と共に、猫がにゃーんと鳴いた。


Fin.
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