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GF e-side

純情エゴイストへの愛を散らかし中。

2024'11.23.Sat
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2009'01.31.Sat
「似合わない?」
「はい。休憩時間に、何故か名前の話になったんですけど、俺の名前には『台風』という意味があるって言ったら…」
草間先生と台風は結びつかないと言われてしまったんです、と野分は続けた。

何言ってるんだ。こいつは台風そのものじゃねーか。
初めて会った時の事を思い出す。失恋で泣いていた俺の事を強引に引っ張り出し、家に上がり込んで、あまつさえ家庭教師をする約束すらさせられた。

そして、野分が『台風』だと実感させられたあの時……。

俺がどれだけ振り回されたと思っているんだ。

そこまで考えてふと気付く。
野分がそんな事をするのは俺に対してだけなのだという事に。

職場での野分を“穏やかで優しい草間先生”と認識するのは間違っていないんだろう。基本的に普段の野分は人当たりのいい好青年なのだから。

「で、似合わないって言われてお前はどう思ったんだ?」
「えっと…。そもそも台風みたいな人というのがどんな人を差すのかが良く分からなくて…」
本当にピンとこないらしく、思案顔な野分。雑談なのだからそんなに考え込む必要もないのにと思いつつ、そんな真っ直ぐなところに好感が持てる。こういった事も『台風』という名前が似合わないと言われてしまう所以なのだろう。

しかし俺は知っている。
俺だけに向けられる野分の激情を。

例えば、「別れたくない」と追いすがって来たあの時。
例えば、肌を重ねて強く俺を求める時。

俺しか知らない野分の顔がある事に優越感を抱く。

「野分」
「はい?」
「…お前は間違いなく『台風』だよ」
少なくとも俺にとっては、な。

「それはどういう意味で…」
野分は言われた言葉の意味を計りかねてきょとんとしている。
意味を聞かれても教えてやるつもりはない。

「だけど、それは俺だけが知っていればいい」
視線を外し、野分に聞こえるか聞こえないか分からないくらいの声で呟く。
むしろ聞こえなくていいと思っていたのに、こいつはこういう事は聞き逃さない。
チラリと様子を伺うと満面の笑みを浮かべた野分と目が合ってしまい、慌てて視線を戻した。

「じゃあ、ヒロさんもその可愛い顔を俺以外に見せないで下さいね」
「ア…アホか!可愛くねえって何度も言ってるだろうが!」
「可愛いです」
真面目に断言され、返す言葉が見つからないのが悔しい。

この局地的大型台風の猛威は、当分過ぎ去りそうにない。



Fin.

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お題は『
綺羅星-Kiraboshi-』様から頂きました。
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