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GF e-side

純情エゴイストへの愛を散らかし中。

2024'11.23.Sat
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2008'05.17.Sat

―――長い間、ずっと焦がれていて、欲しかった言葉がある。

たった一言。

そのたった一言がもらえれば、俺は報われると知っている言葉。
同時に、永遠にもらえないという事も嫌という程分かっていた言葉。


プライドの高い俺は、その言葉が欲しいなどと自分から言えるわけもなく、臆病な俺は、自分の胸の内にあるその言葉を相手にぶつける事もできなかった。

そうやって何年も何年もやり場のない想いを抱え続け、きっと、一生俺はこのまま誰にもその言葉をもらう事はできないんだ、などと思い始めた頃、アイツが現れた。

その名の通り、台風のような存在である野分は、俺の心の中に入り込み、俺のプライドを崩す。野分のペースに巻き込まれまいとする俺の必死の抵抗も空しく、流されていく事を自覚する。無二の愛情を注がれ、その愛情に溺れて行く中で、俺にあの言葉をくれるとしたら野分しかいないと思っていたのに、野分は何も言わずに俺の前から姿を消した。

またか。
また俺はあの言葉をもらう事はできないのか。

野分がいない一年の間、俺の頭はその事で支配されていた。だから、野分が帰って来ても素直になれず、卑屈な思いばかりが心を占める。それでも野分の事が好きな自分にも気付いていて、頭の中がぐちゃぐちゃで、自分が一体どうしたいのかも分からなくて、野分が何を言っても聞いてやるもんか、などと子供じみた考えなども起こしていた。

そんな俺の頑なな心を溶かしたのは、野分の一言。

『ヒロさんが、俺の一番だからです』

…どうしてお前はピンポイントで俺の欲しかった言葉を突いて来るんだ?
俺がその言葉にどれだけ焦がれていたか知っているのか?
俺はただ、俺の一番好きな人にも俺を一番だと思って欲しかっただけ。
たったそれだけの事なのに叶わなくて、何年も待って…。

***

後日、何かのはずみで、野分のあの言葉が嬉しかったという事をうっかり本人に言ってしまった。
「え…。ヒロさん、俺がずっとヒロさんの事を一番に思っていた事に気付いてなかったんですか?!」
「うるせー。言わなきゃわかんねーんだよ!」
照れ隠しに、乱暴な物言いになる。
「なんで俺が言って欲しいと思う言葉を言って来るんだ?!お前に全部見通されるみたいでムカつく」
その上、逆ギレ。野分よりも4歳も年上なのに、こんなガキっぽい事を言ってしまう自分がたまに嫌になる。

「それは、多分…」
一瞬の逡巡の後、野分がにっこりと満面の笑みで言った言葉は…。
「愛の力ですね」

「…ッ!恥ずかしい事言うんじゃねーっ!!」
相変わらず恥ずかしい事をさらりと言いやがって…!そのお目出度い思考は一体どこから出てくるんだ?!しかも、そんなお目出度い台詞を聞いて、嬉しいと思ってしまう俺の頭もどうかしている。

ちくしょう、バカヤロウ、…大好きだ。
言ったからには、その言葉、責任取ってもらうからな。

Fin

--
雨の中で野分を待っていたヒロさんの「誰かの一番になりたかった」というのが切なすぎです。ポーカーフェイスしてるつもりで考えてる事がバレバレな不器用なヒロさんが好きです(笑)。
お題は『
綺羅星-Kiraboshi-』様から頂きました。
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