GF e-side
純情エゴイストへの愛を散らかし中。
2008'11.28.Fri
仕事帰りにいつもの公園でヒロさんを待つ。
今日は珍しく俺の方が早く待ち合わせ場所に着いたので、ベンチに座って待っていると、何かが目の前に落ちて来た。
今日は珍しく俺の方が早く待ち合わせ場所に着いたので、ベンチに座って待っていると、何かが目の前に落ちて来た。
手にとってみると、それは赤く色付いた一枚の葉。
忙しく日々を過ごしているうちに、いつの間にか木々が色鮮やかになる季節になっていたみたいだ。この公園の側を毎日通っているのに今まで気が付かなかったなんて、少し心に余裕がなかったのかもしれない、と反省する。
「すまん、遅くなった」
掛けられた声に顔を上げると、落ち葉を踏みながらこちらに向かって来るヒロさんの姿を見つけた。
色付いた木々の下を二人並んで歩く。
夕方なので公園には人が大勢いるみたいだけど、中心から離れたこの辺りには俺とヒロさんしかいない。シャクシャクと落ち葉を踏む音だけが静かに響く。
今日は俺の仕事が終わる時間に合わせて一緒に食事をしようとヒロさんから誘ってくれた。珍しいヒロさんからの申し出に、単純に俺は嬉しくなってしまったのだけど、何か話したい事とかあるんだろうか、と今になって思う。
「…お前さ、前に俺が言った事覚えてるか?」
なんとなく、ヒロさんから何かを言ってくるのではないかとしばらく無言でいると、唐突にヒロさんが口を開いた。
「言った事って…?」
「“ヤバイと思ったら俺に言え”って事」
以前、精神的にも肉体的にも自分の許容量を超え、それでもヒロさんに追い付きたいと焦る心を持て余していた時にヒロさんが俺を心配して掛けてくれた言葉を忘れるはずがない。
「勿論、覚えています」
「ん。覚えてるんならいい」
俺の顔を見もせずに確認だけ済ませたヒロさんはそのまま歩みを止めない。
あれ…?もしかして…。
ヒロさんは今も俺を心配してくれている…?
確かに最近忙しくて少し余裕がなかった。それでも、無理しているつもりはなくて、まだ頑張れると思っていた。それなのに、ヒロさんには見抜かれてしまったらしい。多分、食事に誘ってくれたのもそんな俺を心配してなのだ。
本当に、ヒロさんにはかなわない。
「ヒロさん」
足を止めて名前を呼ぶ。
ヒロさんの気持ちが嬉しくて、愛しくて。
そして、大人になりきれない自分が不甲斐なくて。
「まだ大丈夫です」
やせ我慢ではない本当の気持ち。
ヒロさんが気に掛けてくれるなら、まだまだ大丈夫。
少し前を歩いていたヒロさんも足を止めて振り返る。
ヒロさんは俺が無理をしているかどうかも分かってしまうのだろう。俺の顔をジッと見ていたヒロさんの顔が少し和らぐ。わかってもらえたみたいだ。
その時、風が吹いて木々が揺れた。
ひらひらと数枚の赤い葉が舞い落ち、そのうちの一枚がヒロさんの髪に引っ掛かってしまう。
「ああ、動かないで下さい。俺が取りますから」
ヒロさんの髪に真っ赤な葉はとても映えて綺麗だけど、まさか葉を付けたまま歩くわけにもいかない。歩み寄って葉を取ろうと手を伸ばすと、触れたわけでもないのにヒロさんの顔が少し赤くなっている。
さっきまであんなに大人に見えた人が一転して見せるそんな表情に、愛しい気持ちがこみ上げてくる。
葉をつまむついでに、柔らかい髪の毛に軽くキスをすると、ヒロさんの頬はまるで紅葉が色付くように真っ赤に染まる。
「?!アホ!何やってんだ!」
「紅葉の葉っぱも綺麗ですけど、俺はヒロさんの方が好きです」
「比較対象がおかしいだろうが!なんで紅葉と俺なんだ!」
「何と比べても、ヒロさんは俺の一番ですよ」
大好きなヒロさんが俺を見ていてくれている。だから俺は頑張れる。
いつか、対等に支え合う事のできる男になれるまで。
Fin.
--
綺麗な紅葉の写真を見たので紅葉を絡めた話を書きたくなりました。葉っぱが色付いて綺麗→色づくといえばヒロさんのほっぺ…というよく分からない連想。
忙しく日々を過ごしているうちに、いつの間にか木々が色鮮やかになる季節になっていたみたいだ。この公園の側を毎日通っているのに今まで気が付かなかったなんて、少し心に余裕がなかったのかもしれない、と反省する。
「すまん、遅くなった」
掛けられた声に顔を上げると、落ち葉を踏みながらこちらに向かって来るヒロさんの姿を見つけた。
色付いた木々の下を二人並んで歩く。
夕方なので公園には人が大勢いるみたいだけど、中心から離れたこの辺りには俺とヒロさんしかいない。シャクシャクと落ち葉を踏む音だけが静かに響く。
今日は俺の仕事が終わる時間に合わせて一緒に食事をしようとヒロさんから誘ってくれた。珍しいヒロさんからの申し出に、単純に俺は嬉しくなってしまったのだけど、何か話したい事とかあるんだろうか、と今になって思う。
「…お前さ、前に俺が言った事覚えてるか?」
なんとなく、ヒロさんから何かを言ってくるのではないかとしばらく無言でいると、唐突にヒロさんが口を開いた。
「言った事って…?」
「“ヤバイと思ったら俺に言え”って事」
以前、精神的にも肉体的にも自分の許容量を超え、それでもヒロさんに追い付きたいと焦る心を持て余していた時にヒロさんが俺を心配して掛けてくれた言葉を忘れるはずがない。
「勿論、覚えています」
「ん。覚えてるんならいい」
俺の顔を見もせずに確認だけ済ませたヒロさんはそのまま歩みを止めない。
あれ…?もしかして…。
ヒロさんは今も俺を心配してくれている…?
確かに最近忙しくて少し余裕がなかった。それでも、無理しているつもりはなくて、まだ頑張れると思っていた。それなのに、ヒロさんには見抜かれてしまったらしい。多分、食事に誘ってくれたのもそんな俺を心配してなのだ。
本当に、ヒロさんにはかなわない。
「ヒロさん」
足を止めて名前を呼ぶ。
ヒロさんの気持ちが嬉しくて、愛しくて。
そして、大人になりきれない自分が不甲斐なくて。
「まだ大丈夫です」
やせ我慢ではない本当の気持ち。
ヒロさんが気に掛けてくれるなら、まだまだ大丈夫。
少し前を歩いていたヒロさんも足を止めて振り返る。
ヒロさんは俺が無理をしているかどうかも分かってしまうのだろう。俺の顔をジッと見ていたヒロさんの顔が少し和らぐ。わかってもらえたみたいだ。
その時、風が吹いて木々が揺れた。
ひらひらと数枚の赤い葉が舞い落ち、そのうちの一枚がヒロさんの髪に引っ掛かってしまう。
「ああ、動かないで下さい。俺が取りますから」
ヒロさんの髪に真っ赤な葉はとても映えて綺麗だけど、まさか葉を付けたまま歩くわけにもいかない。歩み寄って葉を取ろうと手を伸ばすと、触れたわけでもないのにヒロさんの顔が少し赤くなっている。
さっきまであんなに大人に見えた人が一転して見せるそんな表情に、愛しい気持ちがこみ上げてくる。
葉をつまむついでに、柔らかい髪の毛に軽くキスをすると、ヒロさんの頬はまるで紅葉が色付くように真っ赤に染まる。
「?!アホ!何やってんだ!」
「紅葉の葉っぱも綺麗ですけど、俺はヒロさんの方が好きです」
「比較対象がおかしいだろうが!なんで紅葉と俺なんだ!」
「何と比べても、ヒロさんは俺の一番ですよ」
大好きなヒロさんが俺を見ていてくれている。だから俺は頑張れる。
いつか、対等に支え合う事のできる男になれるまで。
Fin.
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綺麗な紅葉の写真を見たので紅葉を絡めた話を書きたくなりました。葉っぱが色付いて綺麗→色づくといえばヒロさんのほっぺ…というよく分からない連想。
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