GF e-side
純情エゴイストへの愛を散らかし中。
2008'10.20.Mon
ARASHISTIC Egoistの瑠沙さんから、SS&イラストもらいました!
以前、キリ番踏んでリクエストさせてもらったのですvv今や、瑠沙さんといえばマフィア!ですが、まだマフィアブームが来る前に瑠沙さんが描かれていた執事野分がすっごくかっこ良かったので、“執事な野分”でSSお願いしたら、イラストまでつけてくれましたよ!嬉しい!瑠沙さん、本当にありがとうございました!
* * *
以前、キリ番踏んでリクエストさせてもらったのですvv今や、瑠沙さんといえばマフィア!ですが、まだマフィアブームが来る前に瑠沙さんが描かれていた執事野分がすっごくかっこ良かったので、“執事な野分”でSSお願いしたら、イラストまでつけてくれましたよ!嬉しい!瑠沙さん、本当にありがとうございました!
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A day in the Life
眼を開けなくても大きな窓から暖かい日差しが降り注いでいるのが分かる。
ふわふわと柔らかいシーツの中で感じるその暖かさは、手放し難くて
いけないとわかっててもつい「もう少し…」とこのドロドロな浅い眠りの中に
浸っていたいと思ってしまう。
しかし。
「ご主人様、お目覚めの時間ですよ」
そう言いながら頭までかぶっていたシーツをそおっとめくるその手からする
微かな紅茶の香りと、まるで毒のように甘いテノールの声も耐え難い誘惑で、
どうすればいいのか分からなくなる。
「もう、少し…」
普段なら絶対言わないわがままを口にすると、頭の上の甘い声がくすっと
小さく笑って額にかかった長めの前髪を愛しそうにそおっと掻き揚げた。
そしてベッドが少し軋む音がして、紅茶の香りとその高めの体温を一層近くに感じる。
「駄目ですよ、起きてください。」
「……。」
起きたくない。
そう思いながら薄っすらと目を開けてみると朝のはずなのに視野は真っ黒に
染まっていた。深い深い漆黒の瞳がまっすぐ弘樹を見つめていて、
ああ、吸い込まれしまいそうだと弘樹はまだぼんやりとする頭で思った。
いっそあの瞳に俺が吸い込まれればいいのに。
何もかもを全てお前の中に吸い込んでしまえ。
そうして俺らは二人ではなく、ただ一つになってしまえばいい。
それで現実も地位も立場もクソも全部なくなってしまえばいい。
そう思うと少し切なくなって、弘樹はただただ目の前の黒い男を見つめ返した。
「ご主人様?どうされました?」
「…起きたくない」
「……」
本日二度目のわがままを口にすると、この鋭い男はそれで全てを察したようで
その瞳が微かに揺れた。
「…わかりました。」
そう言って彼はまた弘樹の髪を掬いとってその髪に軽いキスを落とした。
「それがご主人様のお望みでしたなら、そうしましょう。
ご主人様は今日はお調子があまりよろしくないようですと、
下にお知らせいたします。」
「…ごめん」
「何をおっしゃいますか。ご主人様の望み通り動く、
それがわたくし執事のお仕事です。
…他に、してほしいことはありますか?」
「朝食も、昼食も ここで食べる。今日は1日誰にも会いたくない。
誰にも。親父も、お袋も。…子供にも、彼女にも。」
「はい。分かりました。他には?」
「………。」
「ご主人様?」
不意に顔を背けて黙り込んでしまう弘樹を、野分―執事は心配そうな声で呼びかけた。
弘樹はしばらくしてから、視線を逸らしたままゆっくりと口を開けた。
「…そして今日一日、その呼び方やめろ」
「……。」
弘樹がそう命じると目の隅に、困っている野分の顔が見えて、弘樹はまた切なくなった。
自分が野分を困らせていることはよく分かっている。誠実でバカみたいに
真面目な野分にその命令はいつまで経っても困るものらしいから。
けれど、今日だけは、せめて今日一日だけは「ご主人様」と呼ばれたくない。
それは、プライドは無駄に高くて、そのくせ義理が硬くて現実と本音の挟間で
どうにもならずにただただそこにとまっているだけの弘樹に言える最大の我侭なのだから。
この「俺だけのものになれ」なんて言えないから。
そしてそんな弘樹の思っていることは、きっと野分にもわかっているはず。
「…わかりました。」
長い長い沈黙の後、野分は身体を屈めて弘樹をシーツごと抱きしめてきた。
弘樹のうなじに顔をうずめて、野分はどこか切なそうな、けれどやっぱり甘い
声で弘樹の望みを叶えると答えた。
「ヒロさん。」
「…ああ」
「今日、1日だけ、俺をヒロさんだけの傍にいさせてください。」
その言葉に、やっぱり伝わっていたのだと、弘樹は嬉しいような泣きたいような気持ちになる。
自分がひどく身勝手なことをしているのだと、分かっている。
野分をこんな風に繋ぎとめられる資格なんてないことも。
けれど、野分がそうしてくれると言うから―――
まだまだ自分の傍にいてくれると言うから―――
だから、今日一日だけ。
1日だけ、二人でいよう。
ご主人様と執事でなく、ヒロさんと野分でいよう。
弘樹は野分に背を向けたまま、手だけをそっと野分の手に重ねた。
「…それが、執事の仕事だろーが。」
すると答えの変わりに、弘樹の唇に羽のようなキスがそおっと落とされた。
END
-------
イラストはクリックすると拡大します!後ろから抱きしめる&重ねた手は何度見てもきゅーんとするのですvv
野分に執事は良く似合います(^^)。というか似合いすぎます!朝の優しい雰囲気の中に切なさが混じる二人の関係がすごく好きです。わがまま言うヒロさん可愛い!物語の詳細な設定は瑠沙さんのサイトにありますので、そちらも是非ご覧下さいv
眼を開けなくても大きな窓から暖かい日差しが降り注いでいるのが分かる。
ふわふわと柔らかいシーツの中で感じるその暖かさは、手放し難くて
いけないとわかっててもつい「もう少し…」とこのドロドロな浅い眠りの中に
浸っていたいと思ってしまう。
しかし。
「ご主人様、お目覚めの時間ですよ」
そう言いながら頭までかぶっていたシーツをそおっとめくるその手からする
微かな紅茶の香りと、まるで毒のように甘いテノールの声も耐え難い誘惑で、
どうすればいいのか分からなくなる。
「もう、少し…」
普段なら絶対言わないわがままを口にすると、頭の上の甘い声がくすっと
小さく笑って額にかかった長めの前髪を愛しそうにそおっと掻き揚げた。
そしてベッドが少し軋む音がして、紅茶の香りとその高めの体温を一層近くに感じる。
「駄目ですよ、起きてください。」
「……。」
起きたくない。
そう思いながら薄っすらと目を開けてみると朝のはずなのに視野は真っ黒に
染まっていた。深い深い漆黒の瞳がまっすぐ弘樹を見つめていて、
ああ、吸い込まれしまいそうだと弘樹はまだぼんやりとする頭で思った。
いっそあの瞳に俺が吸い込まれればいいのに。
何もかもを全てお前の中に吸い込んでしまえ。
そうして俺らは二人ではなく、ただ一つになってしまえばいい。
それで現実も地位も立場もクソも全部なくなってしまえばいい。
そう思うと少し切なくなって、弘樹はただただ目の前の黒い男を見つめ返した。
「ご主人様?どうされました?」
「…起きたくない」
「……」
本日二度目のわがままを口にすると、この鋭い男はそれで全てを察したようで
その瞳が微かに揺れた。
「…わかりました。」
そう言って彼はまた弘樹の髪を掬いとってその髪に軽いキスを落とした。
「それがご主人様のお望みでしたなら、そうしましょう。
ご主人様は今日はお調子があまりよろしくないようですと、
下にお知らせいたします。」
「…ごめん」
「何をおっしゃいますか。ご主人様の望み通り動く、
それがわたくし執事のお仕事です。
…他に、してほしいことはありますか?」
「朝食も、昼食も ここで食べる。今日は1日誰にも会いたくない。
誰にも。親父も、お袋も。…子供にも、彼女にも。」
「はい。分かりました。他には?」
「………。」
「ご主人様?」
不意に顔を背けて黙り込んでしまう弘樹を、野分―執事は心配そうな声で呼びかけた。
弘樹はしばらくしてから、視線を逸らしたままゆっくりと口を開けた。
「…そして今日一日、その呼び方やめろ」
「……。」
弘樹がそう命じると目の隅に、困っている野分の顔が見えて、弘樹はまた切なくなった。
自分が野分を困らせていることはよく分かっている。誠実でバカみたいに
真面目な野分にその命令はいつまで経っても困るものらしいから。
けれど、今日だけは、せめて今日一日だけは「ご主人様」と呼ばれたくない。
それは、プライドは無駄に高くて、そのくせ義理が硬くて現実と本音の挟間で
どうにもならずにただただそこにとまっているだけの弘樹に言える最大の我侭なのだから。
この「俺だけのものになれ」なんて言えないから。
そしてそんな弘樹の思っていることは、きっと野分にもわかっているはず。
「…わかりました。」
長い長い沈黙の後、野分は身体を屈めて弘樹をシーツごと抱きしめてきた。
弘樹のうなじに顔をうずめて、野分はどこか切なそうな、けれどやっぱり甘い
声で弘樹の望みを叶えると答えた。
「ヒロさん。」
「…ああ」
「今日、1日だけ、俺をヒロさんだけの傍にいさせてください。」
その言葉に、やっぱり伝わっていたのだと、弘樹は嬉しいような泣きたいような気持ちになる。
自分がひどく身勝手なことをしているのだと、分かっている。
野分をこんな風に繋ぎとめられる資格なんてないことも。
けれど、野分がそうしてくれると言うから―――
まだまだ自分の傍にいてくれると言うから―――
だから、今日一日だけ。
1日だけ、二人でいよう。
ご主人様と執事でなく、ヒロさんと野分でいよう。
弘樹は野分に背を向けたまま、手だけをそっと野分の手に重ねた。
「…それが、執事の仕事だろーが。」
すると答えの変わりに、弘樹の唇に羽のようなキスがそおっと落とされた。
END
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イラストはクリックすると拡大します!後ろから抱きしめる&重ねた手は何度見てもきゅーんとするのですvv
野分に執事は良く似合います(^^)。というか似合いすぎます!朝の優しい雰囲気の中に切なさが混じる二人の関係がすごく好きです。わがまま言うヒロさん可愛い!物語の詳細な設定は瑠沙さんのサイトにありますので、そちらも是非ご覧下さいv
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